2018.08.05

【日替わりレビュー:日曜日】『異世界転生に感謝を』二戸謙介,古河正次,六七質

『異世界転生に感謝を』

異世界転生もの。確かに流行りではありますし、ひとくくりにされてしまいがちな面もありますが、実際のところ一作品ずつゆっくり紐解いてみると、それぞれの良さがあったり個性が光っている良質な作品も多いジャンルではあります。

今回ご紹介する『異世界転生に感謝を』も、タイトルからして直球ですし、このジャンルに分類されるタイトル。ただ、独特な空気感があるため今回ピックアップさせて頂きました。

主人公のジンは、現実世界では70歳をこえるお年寄り。幼少の頃よりゲームにどっぷりつかり、いつかこのファンタジーRPGの世界で暮らしてみたいと思っていましたが、この年齢でついにその世界観をリアルに体験できるVRゲームに触れる機会を得ます。しかし、念願かねってプレイしている矢先に、ゲームからはログアウト出来なくなってしまい、前世での記憶を保ったまま、異世界へ転生を果たしてしまう…というのが導入部分。

つまりは、異世界転生をして見た目は若々しい主人公の内面は、実は経験豊富なお年寄りという構成です。

本作の魅力は、この主人公だけしか紡げない、人生観の豊かさ

今のところ、ドキドキハラハラな分かりやすい冒険ストーリーではありませんが、異世界では見た目の若いジンの、前世の経験を活かしながらも、穏やかな人間性を反映したヒューマンドラマを描いているのが素晴らしい。
実際に長年の経験を踏まえた人生観から発せられる、ポジティブで温かみのある言葉や空気感は、物語全体や他キャラクターに優しさを与えており、読んでいてほっこりさせてくれること、受け合いです。

こういったジャンルの作品に対して、どうしても穿った見方をしてしまいがちではありますが、そういった表層的な部分を良い意味で利用した上で、本来の物語のおもしろさに重点を置いている本作、ぜひチェックをお願いします!

試し読みはコチラ!

この記事を書いた人

八木 光平

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