2018.08.14
【2018年7月】マンガ家が選ぶ 今月の注目!新連載マンガ
毎月100本以上の新連載が始動しているマンガ戦国時代とも言うべき昨今。その中でも、マンガ家たちが注目した作品をピックアップしていく本連載。
今回は、2018年6月18日~2018年7月22日の間に始まった新連載マンガから「マンガ新連載研究会」(マンガ家による勉強会サロン)が着目した作品を紹介いたします。
『異世界おじさん』
【告知】コミックウォーカーで連載始まりました。『異世界おじさん』です。宜しくお願いします!ニコニコ漫画でも掲載予定とのことです。https://t.co/ETjUDEGFFV https://t.co/LptBAplmos pic.twitter.com/qufBThsT9p
— 殆ど死んでいる (@almostdead2012) 2018年6月29日
トラックにはねられて17年間昏睡状態だったオッサンが目覚めたが、オッサンには17年間の異世界転生の記憶が!という、「異世界行って戻ってきた後の話」を描いた現代コメディです。
オッサンは、現実社会でも魔法が使えるなど、異世界文化からの影響を受けている上に、17年間が経過していたため浦島太郎状態にもなっているという、異文化+タイムスリップの二種類の文化的差異が混在して描かれる話になっています。異世界という異文化から帰ってきたオッサンは、今度は17年後という異文化に晒されるわけですね。スマホとかツンデレとかよく分かっていない。
さて、今回取り上げたのは、この作品が「オッサン」をタイトルにまで使ってフィーチャーしているところです。今月は他にも『オッサン(36)がアイドルになる話』という、やはりオッサンをフィーチャーした作品がありました。
さらに先月まで遡ると『エスパーおじさん』『おっさん魔王とニート勇者』と、オッサンをタイトルに冠した作品の連載が二作品も始まっています。
最近はどうも「オッサン」をメインに据えた作品が多くなっている気がします。若いイケメンをメインにした方が売れそうなものですが、ここまでオッサンが取り上げられるということは、おそらくオッサンには何か特有の効果や面白みがあるということなのでしょう。
当マンガ新連載研究会でも「おじさん研究班」が結成され、「オッサン」というキャラクターの特殊性についての研究が始まっています。
『乙ゲーにトリップした俺♂』
【連載のお知らせ】7月20日よりpixivコミック・ジーンピクシブ様にて、『乙ゲーにトリップした俺♂』という漫画を連載させていただきます。元々はpixivで描いてた趣味漫画でしたが、お声をかけていただきました。精一杯頑張ってまいりますので宜しくお願いいたします!#乙ゲーにトリップした俺♂ pic.twitter.com/dMpO4JreuU
— 花乃軍(かのいくさ) (@k193com) 2018年6月15日
男子大学生の主人公がトリップした先は、なぜか乙女ゲーの世界で……。
という、ゲーム内の登場人物になってしまうストーリーです。ギャルゲーや乙女ゲーの世界の住人になってしまう作品は、最近ではあまり珍しいものでもなくなってきました(今月は他にも『姉ちゃんには絶対恋しない!』という、主人公が乙女ゲームの攻略対象であることを自覚する作品がありました)。
ですが、本作の特殊性は、主人公(♂)が乙女ゲームのヒロインとしてトリップしてしまったところにあります。周りの美形男たちは全員自分をヒロイン(女の子)かのように扱ってくる。その上、さらにですね……その美形男たちも実は主人公を男だと認識しているのです。
認識しながらも「乙女ゲーの登場キャラ」というプロ意識のみに従って、本当は嫌だけれどムリをして主人公をヒロイン扱いしていると言うですね……。
いわば、誰も得しない同性愛関係が繰り広げられる、すごく屈折した設定の作品なのです。お互いに「男となんかイチャイチャしたくない」と思いながらも、ゲーム世界の見えざる力に強制されて、男とイチャつく役割と未来を強要されるという、ほとんど精神的レイプのような作品なのです。これは辛い。
誰も幸せにならない設定の無慈悲さが筆者の心に強く刺さった作品です。
登場人物全員がかわいそうすぎる……こんなのってないよ……。「全員の好感度を3以上5未満」に保つことで誰ともくっつかずに大団円エンドを迎えるという一縷の希望を、果たして主人公は掴み取ることができるのでしょうか……。
『暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが』
新連載第一話、公開されましたー! リンク先で無料で読めます!【暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが】大人気"最強"異世界ファンタジー、コミカライズ堂々開幕!! https://t.co/Z8hJLuOkFD #コミックガルド
— 合鴨ひろゆき@7/10より新連載開始 (@aigamo_op) 2018年7月10日
最近の新連載作品は異世界モノが非常に多く、毎月10作くらいは異世界モノが始まってる気がするのですが、今月は特に異世界モノが多かった印象です。ここまで紹介した『異世界おじさん』や『乙ゲーにトリップした俺♂』も広い意味では全て異世界モノみたいなものですしね……。
さて、そんな異世界モノですが、これだけ大量に現れると、さまざまな尖ったアイデアが生まれています。「異世界さえ行ってりゃ後は何してもいいんだろ」みたいな感じで、もはや異世界大喜利感すらあります。
例えば、今月は「日本」という国がまるごと異世界にワープしたので、まずは異世界の国々と国交を樹立するところから始める『日本国召喚』という作品も始まっています。スケールがでかい。
それで本作ですが、異世界転生先で「暗殺者」という職業になった主人公が、暗殺者のスキルを駆使して、自分たちを異世界に召喚した王族たちの企みを調査するという期待感のあるスタートとなっています。国王は自分たちを勇者候補だと称えて魔王討伐を依頼してくるし、クラスメイトはそんな展開に浮かれ切っているけど、王族たちは影では何やら怪しい企てをしているのです。
「用意された舞台設定を根本からぶち壊してやろう」というマインドを感じさせてくる作品であり、そういうのってワクワクしちゃいますね。気付いたら知らない男女と同じ部屋に入れられており、デスゲームの始まりだ!と言われた瞬間に、その場にいた全員と意気投合してデスゲーム主催者をみんなで殺しに行くみたいな、なんかそういうワクワク感。
『ライドンキング』
本日発売の月刊少年シリウスで新連載開始です
ライドンキング読んでね
プルジア共和国の位置は深く詮索しちゃダメだぞ pic.twitter.com/QjlJFuuz0I— 馬場康誌 (@88yasushi) 2018年5月26日
はい! 今月は最後まで異世界転生モノで締めましょう。これもすごい。プーチン大統領(っぽいキャラクター)がファンタジー世界に転生する話です! もう、これ以上、説明する必要あるのかな!?
異世界転生モノのお約束によりトラックに襲われる大統領ですが、それはトラックを一本背負いすることで難なくクリア。しかし、なんだかんだで異世界転生してしまいますが、その後はワイバーンにドラゴンスクリューを決めるなどして、プーチンめいた肉体の力のみで異世界を謳歌していくのです。
うん、やっぱり、もうこれ以上、説明いらない気がしますね。異世界転生すごい! やっぱ異世界にさえ行ってれば後は何やってもいいんだ! やったぜ!
以上、100作品以上の中からピックアップした4作を紹介いたしました。他にも特筆すべき作品は幾つもありましたので、新連載作品に興味を持たれた方は、こちらから色々な作品を読んでみてくださいね。
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