2018.08.16
【日替わりレビュー:木曜日】『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 岡田麿里、絵本奈央
『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
恋の始まりはいつだって戸惑いとともにある
「初恋はいつか」と問われて、すぐに答えられる人間がどれだけいるだろうか。即答できるものはいい。「あれを恋と呼んでいいのだろうか」とか「恋ではないなら、単なる性欲によるものだったのかもしれない」などと頼んでもいないのに悩み込んでしまう人がいるならば、絶対にオススメしたい作品がある。
文芸部に所属する少女5人の性への目覚めや関心を描いた『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の最新刊が先日発売された。
純文学の性表現や、部員が発する「セックス」という言葉に顔を赤らめる少女たちは、次第に自らの恋心や性欲への目覚めとともに自覚的になっていく。
4巻までは、いわば「戸惑い」の部分が印象的に描かれていた。恋と性欲が結びついてしまう、潔癖な部長の初恋。幼馴染への想いに次第に気づいていく主人公。誰よりも大人びた言動をし、部活動中に「セックス」発言をした張本人の新菜の心の変遷……。
文芸部の少女らしい、「恋と愛とは何が違うのか」というそもそも論から頭を悩ませる姿は、とてもピュアで、そんな純真無垢な少女たちが顔を度々赤らめる様は、読んでいてこちらが赤面するほどに初々しい。
そして、最新刊では、そんな彼女たちの、少々吹っ切れた姿を見ることができる。真剣にセックスや性愛について考え悩み葛藤し尽くした彼女たちは、それでも溢れ出る感情のまま、新たな一歩を踏み出すのだ。4巻という長きに渡る逡巡の末の、恋心の暴発。ここにはもはや清々しさがある。
考えすぎた彼女たちが、本能のまま進めた一歩は、合っているのか間違っていたのか。大きな物語の転換となる最新刊で、今後も目を離せない。
©岡田麿里、絵本奈央/講談社