2018.08.17

【日替わりレビュー:金曜日】『ボンクラボンボンハウス』ねむようこ

『ボンクラボンボンハウス』

読みましたか? ねむようこ先生の『ボンクラボンボンハウス』3巻。ひっさびさにねむようこみ溢れる内容で、ドキドキが止まりませんでした。

とりとめもない感想が続きますが

ねむようこ先生といえば、今や女性向けにとどまらず、ビッグコミックスピリッツやジャンプ改などの男性向けにまで活躍のフィールドを広げており、すっかり売れっ子マンガ家さんという印象。で、私も『午前3時の無法地帯』から追いかけ続けてきて、どの作品も「面白いなぁ」「楽しいなぁ」と読んでいたわけですが、この『ボンクラボンボンハウス』は、その他のいわば”高め安定”なゾーンから一歩抜け出して「ヒットやない、ホームランや!」という力強い手応えを感じたんですよね。

特別ストーリーが奇抜というわけでもないし、変なキャラがいるわけでもないんですが、他のどの作品よりも、ねむようこっぽさが感じられると言いますか。

このワクワク感を、整理された言葉でわかりやすく伝えられる気もしないのですが、伝えずにはいられないので、これからとりとめもない文章が続きますが、お付き合いいただける方だけ読み進めていただければ幸いでございます。

とりあえずあらすじはこんなんです

物語の主人公は、親に黙って大学を中退したカズキ。ある日そのことがバレて、親から残りの学費200万円を叩きつけられ、「それ以外は一切面倒見ないから」と突き放されます。お小遣いであれば無敵の金額ですが、暮らしていくにはあまりにも心許ない200万。先立つものは金金金……。

以降、実家で過ごしても宿泊料を取られるというとんでもないルールの中、彼女が向かった先は、祖母が遺した美容室。そこをリノベーションして暮らせば、家賃はかからない! 早速住まうための計画を練り始めるカズキでしたが、生活費にリフォーム代だって馬鹿になりません。そこで、開業場所を探していた美容師・聖大に一部を貸し、家賃収入を得て、元リフォーム屋の栄吉に力を借りつつ怒涛のDIYライフをスタートさせるのですが……というストーリー。

ヒロミさんとか森泉さんとか、テレビでもちょこちょこと見かける、最近流行りのDIYがテーマな本作。なんともいい加減な性格のヒロインを中心に、個性的な相手役候補2人とで、三角関係が形成されます。

クセのある2人の男の子

ひとりは1階の美容室をレンタルする聖大。ふわっとした柔らかい物腰でとにかく人当たりの良いイケメン。顔良し雰囲気良しな彼に恋する女子も少なくありません。無意識に、無差別にモテるタイプの男の子です。

スタイルは来るもの拒まず、けれども追わず……。いい匂いがしそうで、汗かかなそう……みたいな、ちょっと人間臭さが足りない感じのイケメンキャラ、いるじゃないですか。まさにそんな感じ。チョロいカズキは簡単に彼に恋してしまうのですが、彼女が攻略するにはちょっと色々な意味でレベルが高い物件です。

もうひとりの男の子が、カズキにリノベーション指導をする栄吉。貧しい家庭に育ち幼い頃から苦労をしてきた彼は、どうにも現状に甘えてちゃらんぽらんな生活を送るカズキのことがお気に召さない様子。いい加減で失敗ばかりのカズキに対して、歯に衣着せぬ物言いでズバズバと厳しい言葉をかけてくるのですが、一方で面倒見の良さもあり、ギャーギャーいがみ合いつつもカズキとは良い関係を築いていきます。

地に足つかないヒロインが良い

こんな2人の間でゆらめくことになるのですが、とにかくヒロインのカズキが良い。ねむようこ作品のヒロインって、基本的に優柔不断で恋愛的な足腰が弱い(フラフラしがち)って印象があるのですが、本作のヒロインも例に漏れず。

このふわふわ加減でもって、恋のときめきが描かれるから、読み手としてはこの上なく心地いいんですよね。最初からズンズン一本槍で行ったって面白くないわけで、優柔不断にときに悩みつつ、ふとした時にときめいて、心揺らめくみたいな。理屈や世間体はほどほどに、気持ちにまかせて心地良い方に進んでいくこの感じ、わかりますかねぇ。

初めての恋のようなドキドキ感からは卒業して、どちらかというと安らぎみたいなところに進みたくなる年頃でありながら、でも結婚を意識できるほど打算的にもなれない、モラトリアム感満載なこのアンバランスさがたまらないんですが、本作の場合その塩梅が完璧。

特にカズキの場合、直面している問題がさほど重大じゃないので、存分に恋愛にフラフラできるという強みがあるんですよ。栄吉も聖大もともに魅力的でありながら、どちらも欠点を抱えていて一長一短。どちらが明らかに勝っているという感じではなく、魅力で言えば完全にイーヴン。カズキ自身が内面に抱えるアンバランスさとは打って変わって、キャラクター間のパワーバランスは、やじろべえができるぐらいに整ったバランス感なんですよね。

進行上、当人は全くもって三角関係であることを意識していないのですが、気づかないうちにそんな感じが形成されていく過程がたまらなくムズムズするし、不意にそれを自覚する瞬間にはニヤニヤとドキドキが止まらない。

2巻まではDIY的な面白みもあったんですが、3巻にして完全に恋愛にシフトした感があり、一気にギアを上げて読者の心を掴みに来てます。もしこれから読むって人がいたら、3巻まで一気に読むのが良いのではないかな、と思います。

なんて、ねむようこ的なエッセンスを求めてる人ってのはねむようこファンでしょうし、きっともう読んでいるはずなので、いまさらこんなレビューをしても無駄打ちなのかもしれませんが。でも書かずにはいられなかった。それぐらい心躍った3巻だったのです。

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この記事を書いた人

いづき

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