2018.09.28

【インタビュー】『女子小学生はじめました P!』牛乳のみお「パンツに夢があるから、パンツにこそ力が宿る」

30歳のサラリーマンがある日突然、魔法の力で女子小学生に変身!? 

ニコニコ静画から火がついて大ブレイク。累計40万部突破の新感覚JSコメディ『女子小学生はじめましたP!』、待望の8巻が9月28日に発売されました。 

『女子小学生はじめましたP!』8巻書影

あるひとつのアドバイスから「コンプレックスをオモシロに変えることで、マンガ家としての道がひらけた」と語る牛乳のみお先生。女子小学生の可愛らしさを追求する源にも鋭く言及しています!

牛乳のみお先生(生・のみお先生にはコミケなどで会えるぞ!)

(取材・文:かーずSP/編集:コミスペ!編集部)

女子小学生になれた方が嬉しくないですか?

──まずWeb版『女子小学生はじめました』がスタートしたきっかけを教えてください。

牛乳のみお先生(以下、のみお):もともと「週刊少年サンデー」に在籍していたんですけど芽が出なくて、前にアシスタントとしてお世話になっていた『神のみぞ知るセカイ』若木民喜先生に相談したんです。

若木先生からは「のみおくんは技術はあるけど、パンツを脱ぐのが下手だよね」って言われて、要は「自分をさらけ出すのが下手だ」と指摘されました。それで「どうやってパンツを脱げばいいんだろう?」って悩んでいたら、見事にパンツを脱ぐマンガになってしまいました

──比喩としての「パンツを脱ぐ」って表現だったのでは(笑)

のみおそのままかよっていう。少年誌でやっていた末期の頃は本当に疲弊していたので、自分が癒やされるような、一番楽しめるマンガを描こうと誓ったんです。ロリコンとしては、自分が女子小学生になれたらすごく楽しいんじゃないかなってところから着想しました。

──第一話の冒頭部分が、まさにリアルな心境だったんですね。

のみお:ずっと少年マンガで男キャラばかり描いていたので、「こういう女の子描きたいなー」って願望が強くて。そこで「パンツを脱げ」と言われたので、爆発させてやろうって思ったんです。

──今度は女の子しか出てこないって極端ですね。大人の男として女子小学生と付き合うのではなく、「女子小学生になる」というのが斬新でした。

のみお:男性のままで女子小学生にいたずらするよりも、女子小学生そのものになれた方が嬉しくないですか?

──えっ? そ、そうなんですかね?

のみお:コナン君的な発想です。今の頭脳のまま女子小学生になったら、学校のテストでも良い点数が取れますし、中身がおっさんのまま女子仲間で下着を買いに行ったりして、楽しい女子小学生の日常を過ごせるじゃないですか。

おっさんが女子小学生のイベントをこなしたらどうなるかな?って想像したらネタが尽きないんですよ。例えば、8巻ではブルマで「はみパン」して、そこからお腹が冷えるという話になり、「はみパン」したくなければノーパンになればいいとか、いろいろと想像できるじゃないですか。

担当編集:のみおさんがすごいのは、行き当たりばったりの思いつきだけじゃなくて、ちゃんと理屈が通っているんですよ。だから彼女たちの行動に説得力が出てきますし、読者も応援したくなってくるのがこのマンガのすごいところだと思います。

担当編集のO氏

パンツに夢があるから、パンツにこそ力が宿るだろうって

──女子小学生の日常だけじゃなくて、ファンタジー要素を入れましたよね。魔法少女作品でお約束のしゃべる小動物も登場します。

のみお:当時は『スマイルプリキュア!』が大好きで影響を受けたんだと思います(笑)。でもこのマンガとしては、魔法少女に変身するよりは別のアプローチがあると思っていました。どこに魔力が宿るのかって考えた時、童貞的にはパンツに夢があるから、パンツにこそ力が宿るだろうって。

──ん? 何をおっしゃっているのか理解できないのですが。

のみお:真っ裸よりも、パンツで覆い隠してある方がエロいじゃないですか。パンツがかぶさっている状態が一番無限の可能性を感じるんです。それが本作でいう「童貞力」とか「夢力」に繋がっていて、パンツに込められているエネルギーになっています。

──えっと…? そこまで説明していただいてもやっぱりわからないんですが、そこまでパンツにこだわるのには理由はあるんでしょうか?

のみお:小学校5年生の時に、好きな女の子の裸を見てしまったんです。放課後のホームルームの前に教室で、ぺろーんってその子が下から脱いじゃって、上が裸で下はパンツのまま10分くらい話しかけられていたんです。羞恥心に疎い子だったと思うんですけど、当時は僕のほうが内心「うわー!」って恥ずかしがって混乱しちゃったことがトラウマというか一生の宝物というか……。その子が真っ裸だったら、パンツには興味が出なかったんだと思います。

──その原体験は強烈ですね……。7巻では女子小学生を椅子と机にするのも斬新でした。

のみお:自分でもマンガを描きながら「コイツは何を言ってるんだ?」って意味がわからなかったんですけど、スカートを机に見立てて教科書を入れたかったって気持ちから膨らませました。

──お尻の描写が凝っていますね。

のみお:僕は胸よりもお尻の方が大好きなんです。「おっさんだからお尻の方が好き」みたいなことって関係ないと思うんです。僕は小学生の時からお尻の方が大好きでした!(2回目) お尻描写に関しては今後も力を入れていきたいところですね。

女子小学生の幸せは守るという矜持は強く持っている

──夢川るるちゃんの外見のデザインやモデルはどうやって決めたんでしょうか?

のみお:自分がなりたい一番理想の女の子です。黒髪のセミロングで、発育が良くて、優等生でおしとやか。自分の好みを全部詰め込みました。

──中身の30歳ドーテー君が、リコッタちゃんに罵倒されて喜んじゃったりして、いつも快楽に流されるところがおかしいです。

のみお:自分が女子小学生になったら、ああなりますよねっていうシミュレーションのようなものです。

自制心がなくて流されるんですけど、女子小学生の幸せは守るという矜持は強く持っています。

僕は女子小学生を遠くから愛でたり着せ替えしたいですし、女子小学生には笑顔のまま幸せでいてほしいんです。そういった意味で、僕は光のロリコンなんです。

──『ファイナルファンタジー』に出てきそうですね。成瀬リコッタちゃんはどういう経緯で登場したんでしょうか?

のみお:黒髪ロリの次は、金髪ロリになるシチュエーションが描きたくなったんですよね。

──さっきから全部、そのまんまですよね。

のみお:でも普通に金髪ロリが出てくるだけじゃ面白くないですし、中身がおっさんだと二番煎じなので、今度は三十歳の女性になりました。

──リコッタちゃんは第一部のラスボス感があって、バトル展開が熱くて盛り上がりました。

のみお:パンツバトルからの、女子小学生を助ける「ロリ魂」、実は女の人だったって結末まで。一連の流れはこのマンガを描き始めた初日に思いついていましたが、表現するのに3年かかりました

──ずっと温めていた展開だったんですね。

のみお:まず「面白いマンガ」ってなんだろうってずっと考えていて、読者の予想をいい意味で裏切ると「面白い」って感じてもらえると結論づけたんです。

「ギャグが面白い」とか「物語が重厚」とか、一つ飛び抜けている作品が世の中には多いです。さらに、2つ飛び抜けているものがあると読者は予想が裏切られてビックリするだろうと思って。

萌え系の絵でギャグがぶっ飛んでいるとか、2つ長所があると、2つ目に読者さんが意外性を感じてくれるんです。だから『女子小学生はじめました P!』でも、バカギャグマンガだと思っていたら、なんかバトルを始めたぞって意外性を持たせたかったんです。

──確かに驚かされました。人気のエピソードって他にはありますか?

のみお:ニコニコ静画で反響が大きいのはギャグ回ですね。お姉ちゃん穂乃ちゃんが出てくる回は盛り上がっていただいて嬉しいです。

──お姉ちゃんは「盗撮」と書いて「にっか」(日課)と読む、やばい子です。

のみお:作者としては、お姉ちゃんが妹のるるちゃんに対してどんな仕打ちをしたらるるちゃんが羞恥心を覚えてくれるのかな? 恥ずかしがるのかな?って考えるのはすごく楽しいです。

あとは穂乃ちゃん回も反響が大きいですね。このマンガは本筋から遠いキャラクターほどぶっ飛んだ個性なので、穂乃ちゃんに「いきなり罵ってください」って言われたら面白いかなって。

今までは主人公が変態行為をしていたんですが、穂乃ちゃんは主人公が引くぐらい変態だったという(笑)。ある意味一番自由に動いてくれます。

──親友のりりちゃんも、アブない性癖に目覚めはじめたような……。

のみお:りりちゃんは穂乃ちゃんの次に変態だと思っています。穂乃ちゃんは変態性を隠してないですけど、りりちゃんは「私はまともだから」って言いながら変態なことに興味があって、自覚してないぶん闇が深そうです(笑)。

すごくやりたい気持ちが半分と、残り半分はこの作者と会うのが怖いなって

──Webでスタートしてから半年後に、白泉社の現担当編集にスカウトされたとのことで、どういう経緯だったんでしょうか?

担当編集:個人ブログやTwitterで「このマンガは頭がおかしい」っていう感想が盛り上がっていて(笑)。読んでみたら、今風の可愛い萌え系かなと思ったら、めちゃくちゃギャグが面白かったんです。これはすごく新しいと思って、すごくやりたい気持ちが半分と、残り半分はこのマンガの作者と会うのが怖いなって。

のみお:え、ちょっ……。

担当編集:シラフじゃ勇気が出なくて、一杯酒を引っ掛けながらえいやってメールを送ってお会いしたっていう経緯です。

──アルコールの力がないと勇気が出なかったと(笑)。『ヤングアニマル』的にエッチすぎて掲載NGということはありませんでしたか?

担当編集:ちょっと思ったんですけど、弊誌には『ふたりエッチ』がありますし、ロリなところも『無邪気の楽園』がすでに連載してましたから、逆にヤングアニマルだからこそかなと。

商業連載にあたって「P!」をつけて『女子小学生はじめました P!』として連載が始まりました。連載開始をコミックナタリーさんが記事にしてくださったんですが、その記事がナタリーさんのアクセスランキングで何日もトップになっていて、あれは凄かったです。

──日々新しい記事がアップされている中で、異例の反響の大きさだったんですね。打ち合わせで編集者から「ここを変えてくれ」っていう指摘はあるんでしょうか?

担当編集:絵的にちょっと生々しいところは印象の調整をお願いすることはありますけど、このマンガの中身で、「こういうギャグどうですか?」とか、提案するのは勇気がいるしなかなかできませんよ。それぐらいちょっと常軌を逸してるというか、思いつけないです(笑)

──光のロリコンにならないと難しいかもしれませんね。

のみお:この作品に関しては良くも悪くもツッパらせてくださって、感謝しかありません。遠くに行き過ぎないように手綱を握りながらも、好きに暴れさせてくれるスタンスで掲載できているのはすごいありがたい……何て言うか、やりたい放題ですいません

──本作を描いていて楽しい部分はありますか?

のみお:女の子の洋服とかアクセサリーがたくさん描けるのは、着せ替えしているみたいで楽しいですね。女子小学生向けの雑誌を読んだり「JSガール」とかを眺めながら研究しています。

ちなみに今の女子小学生の流行はファストファッションと呼ばれる、あまり装飾が凝ってない、どぎつい色合いなんです。でも、『女子小学生はじめました P!』に出てくる衣装は3~5年前のトレンドです。レースとか花がたくさんついている値段も高めのデザインで、僕はそっちの方が好みです。

──長期連載していると、3、4年で世間の流行が変わるのは怖くありませんか?

のみお:少女向けマンガを描いている人はすごく気を使っていると思うんですけど、本作は男性読者が多いので、そこまでトレンドを追う必要はないのが幸いしてます。

──描いていて大変な点はありますか?

のみお:デッサンが苦手なので作画で苦労しています。だから毎朝原稿を描き始める前の10分間は、絵の練習を習慣化しています。アニメを一時停止して、人物が振り向く動作をコマ送りしながら模写したり、フィギュアをいろんな角度から描き写したり、紙粘土で実際にフィギュアを作ったりしています。

コンプレックスをオモシロに変えること

──影響を受けたマンガを教えてください。

のみお:1つ目は『るろうに剣心』、主人公が斬新だったんです。人類を守るとか大きな目的のために戦う主人公が多い中、剣心は目の前の人を守る、目に届く範囲の人を守る、それがすごくかっこよかった!

「不殺(ころさず)」の信念を貫く主人公像は、『女子小学生はじめました P!』の「ロリを守る」という主人公に影響を与えていると思います。

──もう一つはなんでしょうか?

のみお:師匠である若木先生の『神のみぞ知るセカイ』です。主人公の桂馬君は若木先生ご自身だと感じていて、自分の特殊な価値観を主人公に当てはめて、エンターテイメントに落とし込む点を学びました。

自分のロリコンという性癖を面白くするにはどうすればいいかってところで、女の子になっちゃうアイデアに繋がったのもそのおかげです。

──冒頭の「パンツを脱げ」ってアドバイスですよね。

のみお:『神のみ』の桂馬君のような「主人公がブレない価値観を持っている」点も、「パンツを脱ぐのが下手だから脱げ」って助言も、若木先生には本当に影響を受けています。

若木先生のもとでアシスタントとして技術を学んでいましたけど、一番学んだのは「コンプレックスや過去の体験を、主人公という存在に凝縮する」キャラクター造形や価値観なんだなって気づきました。

──最近おすすめのマンガはありますか?

のみお『BORUTO』のアニメがすごいクオリティで、改めて『NARUTO』を読んだらドハマリしました。

今の時代はWebでバズることが重視されていて、ヒロインが変な個性を持っているとか一点突破型のマンガが流行っています。でも、『NARUTO』はキャラクター・ストーリー・絵など総合力がすごく高くて…、まあ今更気づいたのか、おせーよって自分でも思いますが(笑)。

──マンガ以外で思い出の作品ってありますか?

のみお:大学生の頃、『ひぐらしのなく頃に』が大好きでした。全く同じ舞台でほぼ同じキャラクターなのに、毎回違う結末に結びつく。あれが凄く衝撃的で。謎解きの面白さもあったので、最初の4編をやった後、何がいつ起きたのか、誰がどういう動きをしたのか、全部エクセルに書き起こしてました。

──すごい熱の入れようですね。怖いのはもともとお好きなんですか?

のみお:いえ、苦手です…。目だけのCGとか、トラウマで2日ぐらい寝られなくなりました(笑)。

──その他、気になっている作品を教えてください。

のみお:ライトノベルの『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』(花間燈,sune/MF文庫)にハマってます。

『可愛ければ変態でも好きになっていいですか』1巻書影

差出人不明のラブレターが置いてあって、その側にパンツが置いてあるんです。そのパンツを穿いていたシンデレラを探すという出だしで、パンツが関わってくることもあって、今、自分の中で熱いですね。

──スランプ脱出法を教えてください。

のみお:「パンツを脱ぐのが下手」という話もそうですが、マンガが上手くいかないということは、自分の中に原因があるというのが自分の経験です。

だから編集さんとか師匠とか、自分のことを知っている他の人に、自分のことを聞いてみるのが解決法の一つだと思います。技術的な点に関しては、練習して積み重ねるしかありませんので。

──牛乳のみお先生にとって「マンガを描くこと」とは何でしょうか?

のみお「コンプレックスをオモシロに変えること」です。

マイノリティな考え方や性癖の人も世の中にたくさんいて、みんな悩んでいると思うんです。例えばそれで誰かを攻撃する材料に使っちゃったりすることは簡単ですが、劣等感をオモシロに変化させることは難しい。

でもオモシロに変えることで、「こういう価値観を持っていてもいいんだ!」って救われる人がいるかもしれません。僕自身、お説教よりもマンガに救われた事が多いんです。

──8巻のおすすめポイントを教えてください。

のみお:8巻はおバカなエピソードが多くて、個人的なおすすめは、はみパン警察。描いていて楽しかったですし、「人類女子小学生化計画」も少し進展があるかも。

担当編集:8巻にはゲスト原稿で、へんりいだ先生(『今日から俺はロリのヒモ!』など)のイラストが掲載されていますので、そちらもお楽しみにしていただけたら。

──それでは読者の皆さんへメッセージをお願いします。

のみお:こんな特殊性癖を持った自分の妄想を、多くの人に読んでもらえるのはめちゃくちゃ嬉しいです。マンガって読んでくれる人がいないと成り立たないものだと思うので、感謝しかありません。これからもよろしくお願いします!

──本日はありがとうございました!

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