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2018.09.10

【日替わりレビュー:月曜日】『泡沫の鱗』ソライモネ

『泡沫の鱗』

ものすごくネタばれなレビューです。切ない系のファンタジーBLが好きなら、レビュー読む前に買って本編を読むことを強くお勧めしたい作品です。端的に言って名作です。

あびるあびい先生が「ソライモネ」に改名して発表された作品となります。

ポリープの手術で今までの声を失ってしまった鉄太が、海辺で出会った不思議な青年・。メジャーデビュー直前に、手術のせいで声が変わってしまったことに絶望して音楽から遠ざかっていた鉄太ですが、凪の謳う声を聞いて再び曲を作り始めます。これまでずっと自分で作った曲を自分で歌っていたのですが、はじめて自分以外の誰かに歌ってほしいと思ったのです。

この、まず声を好きになって、うつくしい青い瞳に惹かれて──という、パーツから本人へと興味が移っていく流れがとても好きです。

凪の元に通いつめ、二人で音楽を作る日々。鉄太は、凪の声だけでなく凪自身も好きになっていきます。
凪も鉄太を好きになって、自然な流れで両想いに。ですが、凪には、本人も自覚していない秘密があったのです。

子供のころ海で溺れかけたところを母に助けられ、母はその時に亡くなったと思っていた凪。自分は泳げないと信じていました。そんな凪を海に入れないでくれと鉄太に頼んだ凪の父。

ある日、凪がいつも耳につけていた母の形見の耳飾りが無くなって、それを探しに海に行った二人ですが、何かの拍子に凪が海に落ちてしまいます。凪が泳げないことを知っていた鉄太は、自分も泳げないことを忘れて彼を助けるために海に飛び込みます。そして……次に気付いた時、鉄太は助かって病院にいました。凪はいません。それどころか、誰も凪のことを覚えていません

目覚めた直後は、ショックのせいか海に落ちた時の記憶をすっかり失っていた鉄太ですが、防波堤に行ったことをきっかけに思い出すのです──海中で見た、鱗におおわれた凪の姿を……。

凪の父が教えてくれました。凪の母は人魚だと。彼は人魚と人間のハーフだったのです。一度、陸に上がった人魚は二度と海に入ってはいけない。入ってしまったら海へ連れ戻されて二度と地上には戻れず、人魚に愛された相手以外の記憶からは、その人魚の記憶は消えてしまうというのです。凪の父と鉄太以外のすべての人は、凪の存在自体を忘れてしまいました。

人魚は、地上に残された愛する者が悲しまないよう、自分の一番大切なものを置いていくといいます。凪が鉄太に残したものは何だったのか。ぜひ、読んで確かめてみてください。

とても切なくて、とても美しい作品です。BLらしいシーンはとてもとても控えめなので、このジャンルが苦手でも読めると思います。

試し読みはコチラ!

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この記事を書いた人

アキミ

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