2018.09.11
【日替わりレビュー:火曜日】『魔法使いの印刷所』深山靖宙,もちんち
『魔法使いの印刷所』
某同人誌即売会のスタッフだった主人公・紙谷美香(ミカ)は、ひょんなことからファンタジー世界に転移してしまう。元の世界に帰るため、異世界転移魔法を求めて彼女は「魔導書の即売会」を立ち上げたのだが……。
ファンタジー世界で魔導書の同人誌即売会を開くという、2つをかけ合わせた意外性のある切り口。
それぞれ自分の魔法を本にしてサークル参加しているんですが、情欲の精を呼び出すエッチな魔導書が発禁サークルになったり、カタログに載っていた新刊情報と実際が違っていたり、一般参加者の開幕ダッシュを騎士団のファランクスで押し止めたり。
コミケあるあるネタとファンタジー要素の掛け合わせが、唯一無二の読み味になっています。
サークルカットを載せるカタログにも魔法がかかっているそうで、あちこち枠をはみ出す描写はほっこりしましたね(しかも飯田ぽち。先生ほか、豪華なゲスト陣で描かれています)。
需要がなさそうなジャンルでも落選させずに多様性を重視する姿勢など、コミケの精神に則った思想がキッチリ描かれているのも好感が持てます。
コスプレ文化の誕生、列整理の苦労……多彩な同人ネタをファンタジー世界に落としこむ料理の仕方が見事な一冊です。
©深山靖宙,もちんち/KADOKAWA