コミスペ!

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2018.09.13

【日替わりレビュー:木曜日】『はしっこアンサンブル』木尾士目

『はしっこアンサンブル』

ハモってみればわかるよ

『げんしけん』が終わり、木尾士目先生が次に描き始めたのは、工業高校を舞台とした合唱部の青春物語

声変わりのせいで、声にコンプレックスのある主人公、藤吉晃。彼は、ひとめも憚らず、合唱部のメンバーを集めるために毎日ひとり歌うクラスメイトの木村仁のことが気になっていた。ひょんなことから、絶対音感と圧倒的知識をもつ木村に、藤吉は声を見初められ、合唱部への入部を勧められる。

あらすじを追うと、どうしても、よくある青春モノのようにしか思えない。しかし、実際に作品を読めば、やっぱりそれは木尾士目先生の作品だ。職を手にするために日々学んでいる地に足のついた生徒たち。よくある青春モノの中だったら、きっと名前もつかないような脇役になりそうな生徒たち。

タイトルの「はしっこ」は、部室もない合唱部をあらわしているのだろうが、そこに描かれるほとんどのキャラクターたちは、現実世界における「はしっこ」の人たちのように感じる。

中心からこぼれ落ちた彼らは、しかし、よくよく見ると味わい深いキャラクターばかりだ。彼らにもそれぞれのバックボーンがあり、コンプレックスがあり、魅力があり、表現したいものがある。そんな彼らが、無個性に感じられやすい合唱部を舞台に青春を楽しもうとしているのも面白い。

物語は、ゆっくりと進む。合唱部が舞台だが、主人公はまだまともに声すら出せていないし、ハモる場面もひとつだけ。でも、その一場面が、ちょっと鳥肌がたつくらいよかったりする。変なやつ、木村が見せる、一瞬のハモり。この場面を見たから、私はもう、これからもずっとこの作品を楽しみに待つだろうことを確信した。藤吉や、今はまだ入部する気配がない他のキャラクターたちが、見事にハモったとき、私たちはどんな感動をこの作品から感じるのだろう。

思い返せばあっという間にすぎてしまった青春が、いまゆっくりとリアルタイムで始まった。一見地味だが凸凹のキャラクターたちの声が重なり合った瞬間が待ち遠しい

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