コミスペ!

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2018.09.20

【日替わりレビュー:木曜日】『ゾンビバット』松林頂

『ゾンビバット』

(今日は木曜日担当・園田さんがお休みのため、日曜日からの出張で、コミスペ!編集部がお届けします。)

ゾンビ! 女子高生! バット!
と単語だけを並べると、まるでB級映画のようですが、本作『ゾンビバット』はゾンビものでありがちな所謂パニックホラーに仕立てていないのが特徴です。

冒頭から女子高生がセーラー服姿のまま、「ゾンビパンデミックから4ヶ月 私はひたすら──ゾンビを殴っている」というモノローグと共に、金属バットを振り下ろしているという強烈な画からスタート。ある種キワモノ感がする滑り出しですが、しかし読み進めていくうちに繊細かつパワーのある画風も相まって、そうではなさそうなことが明らかになっていきます。

まず、主人公のヒミコはゾンビが蔓延するこの世界を「”ゾンビを殺す”というたった一つの方法を守りさえすればどこまでも自由な世界」と自身の中で定義し、パンデミック後の世界を愛しています。それにより、この世界を壊そうとする存在や完全な安全地帯を作ろうとする考えについては拒絶し、たとえ生存者であったとしても邪魔者は排除していくという姿勢です。

その彼女が偶然遭遇した生存者の少女・ワンコは、母親が既にゾンビ化したものの、家族への愛を貫き自宅に匿っていました。

実はゾンビ化した自身の母親を自分の手で息の根を止めた、という過去があるヒミコは、まるで自分のやったことは間違っていなかったと言い聞かせるかのように、ゾンビ化してもなお母親のことを守ろうとするワンコに対しても執拗に自分で母親を始末しろと追い立てます。

そうこうしてる内にセーフティゾーンに近づきつつあった街にはゾンビが増殖しはじめ、物語が加速していくのですが、本作の立て付けとしてはゾンビという要素自体はそこまで重要視はされておらず、それよりも考え方の異なる女子2人の対比が主軸。

世界の状況・ルールが変わった時の正しさとは? という問いかけが、ヒミコとワンコといったそれぞれの母親との関係性や彼女たちがとる行動にのせて投げかけられていくのです。

全体的に重たい雰囲気が流れる本作ですが、ヒミコが行動を共にするガスマスク姿の大人の男性2人組のかけあいが良い感じにゆるく、一時の清涼剤に。

ただ、後輩ポジションのオギ君はまるで子犬のようで人畜無害なタイプなのですが、隊長は飄々とした言葉を投げかけながらも、ガスマスクは絶対脱がないし戦闘能力もやけに高いと謎が多い人物ではあるので、これから彼らが物語にどう関わってくるのかにも期待が高まります。

1巻の段階ではまだなぜこのパンデミックが起こったのかもわからなければ、それぞれのキャラクター背景も深くは提示されていません。しかしそん中、最後にはヒミコがワンコの母親ゾンビに指をかじられてしまい…と、いきなり主人公のバトンタッチも示唆されており、ここからどうなっていくのか…! 今後の展開が今から楽しみな作品です。

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