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2018.09.22

【日替わりレビュー:土曜日】『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』 松本ひで吉

『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』

本作『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』は作者がTwitter上で自らのツイートを元にショートマンガを描き起こしたのをきっかけに、2017年から自身のアカウントで発表を続けて大きな人気を集めた日常エッセイマンガである。

最近「WEBマンガ総選挙2018」でエッセイ系では唯一のベスト10入りを果たしたほか、日曜早朝にテレビ東京系で放送された猫アニメ『こねこのチー ポンポンらー大旅行』(原作『チーズスイートホーム』)の合間に流れる講談社のCMで単行本が宣伝されたため、未読でもタイトルを見聞きしたかたは多くおられるだろう。

単行本は第1巻が今年6月に発売され、10月には第2巻が刊行予定だ。

内容は、題名通り。素直で忠実、明るく元気な甘えん坊のザ・天使「犬くん」と、ギャングの親玉もかくやと思わせる凶悪な威圧感を放つクールな魔王的存在「猫さま」。この犬猫二匹を飼う作者の暮らしを、時に騒がしく時に感動的に描きだしたショートコミック連作だ。

「毎日たのしい」の「毎日」と「たのしい」の間には、悲喜こもごもの情感と癒しがたっぷり詰め込まれている。

ポイントは、犬一匹だけまたは猫一匹だけでもなく、また犬二匹あるいは猫二匹でもなく、二種一匹ずつというところである。

犬対人間。
猫対人間。
犬対猫。
犬&猫対人間、犬&人間対猫、猫&人間対犬……。

ざっと考えても4~6種類もの関係性が同時にからみあっており、さらにそこへ種ごとの生態の違い、また個体としての性格の違いが組み合わさってひじょうに豊かな化学反応をみることができるのだ。

例えば、飼い主に悲しいことがあってぐったり落ち込む姿を犬猫が心配するエピソードがある。

ここで犬くんの場合はボールをくわえてきて遊びに誘ったりぐいぐいと腕の中にもぐりこんでスキンシップをはかったりと暑苦しくもけなげな反応をみせる。
一方、猫さまは物陰からじーっと物思わしげな視線を送ってきたり、容赦なく飼い主の身体にドスンと飛び降りて“撫でてもいいぞ”と言わんばかりの態度をみせる……。

という具合に、ひとつのシチュエーションのもと常に対比で描けるのが本作の有利さといえる。

それはつまり、もし読者が犬か猫のどちらかを飼っていても、単純にあるあるの共感を一発生むだけでは終わらない立体的な刺激を得られるということだ。また、マンガ家さんの日常なので自然と“マンガ家お仕事マンガ”としての側面をもつところにも注目できる(上記の「悲しいこと」というのはマンガのネームが編集に通らずヘコんでいる状況である)。

ところで、本作は『ほんとにあった!霊媒先生』『さばげぶっ!』といったアニメ化タイトルの原作でも知られる作者の……と言えば、「おお、松本ひで吉先生じゃん!」とピントが合うかたも多いだろう。

また、直近の作品で、なぜか保健室の先生として働く猫が女子中学生のお世話を焼く学園コメディ『ねこ色保健室』を読めば、動物による癒しをドタバタしたにぎやかなギャグに練り込むアプローチが、きっちりと創作技術の次元で作者に確立されていることを確認できるので、あわせておすすめしておきたい。

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この記事を書いた人

miyamo

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