2018.09.23

【日替わりレビュー:日曜日】『神々の山嶺』谷口ジロー, 夢枕獏

神々の山嶺

私ごとですが今週久しぶりに急性胃腸炎を発症しまして、家で数日引きこもっていました。絶対安静なのはわかるけど、暇を持て余すのも嫌で本棚に突っ込んでしまったら最後、『神々の山嶺』を小説からマンガ版合わせて一気読み、最高の休日を過ごしてしまいました……。

名作中の名作で、なぜに今この作品を? と自分でも突っ込みたいくらいですが、今年の辛すぎる猛暑を乗り越え紅葉が美しい山の季節が到来したとなれば、山マンガに傾倒したくなりますよ、ね?

肝心のあらすじですが、舞台は山屋じゃなくてもわかるであろう世界最高峰、エベレスト。その標高は8,848m。ベースキャンプ前の麓の町でカメラマン・深町は意味深なカメラを手に入れる。それは、今だに謎とされているマロリーのエヴェレスト登頂の謎を解く可能性を秘めているかもしれず…!?

そして、ネパールでピカール・サンと呼ばれる不思議な日本人クライマーに出会う深町だが、ピカール・サンは日本から姿を消した孤高のクライマー、羽生だった。ネパールに滞在しながら、最難関ルートである南西壁の冬季単独登攀を目論む羽生。羽生と深町は、神々の山嶺とどう向き合っていくのか。

本作はもうひたすら、羽生の漢が、すぎる!!!!!最高!!!!!!!!!

マンガは『孤独のグルメ』が有名な谷口ジロー先生によるものですが、線が生きてる。命を吹き込んでる。

かつてこんなに胸を締め付けてくる最終巻があったでしょうか? もう仕事を放棄して飲みにでも行っちゃおうかな、という時に羽生の声が脳内にこだますること間違いありません。

「まだまだやれる 手も足も動く」
「おれはゆく ゆけるまでゆく」
「まっすぐに まっすぐに上までだ」
「いいか休むな 休むなんておれは許さないぞ」
「ゆるさない 休むときは死ぬときだ」
「生きてる間は休まない 休まない」
「おれが……おれにやくそくできるただひとつのこと」

エベレスト南西壁の延々続く超難所に一人とりつく羽生。酸素不足で視界も限られ、セリフはどんどん、ひらがなになっていく……。紙面を、直視できない。羽生の生き様は、ぜひ紙面で、その目にしっかりと焼き付けてください。

本当に大好きな『神々の山嶺』、小説版も最高だし、マンガ版も最高です。ちなみに羽生役を阿部寛さん、深町役を岡田准一さんが演じ映画にもなりましたが、阿部寛さん以外に羽生を演れる人はいないと確信しました。このスケールの話を2時間に詰め込むのがそもそも無理があった気も否めませんが、そういうのはいいんです。泣きました。

ちなみに、ラストの解釈がちょっぴり違うので、そこも合わせてお楽しみください。個人的には、マンガ版で少し救われたような気がしました。

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コミスペ! 編集部

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