2018.09.24
【日替わりレビュー:月曜日】『イルミナシオン』ヤマシタトモコ
『イルミナシオン』
往年の名作が再出版されました。短編マンガもいくつか同時に収録されています。
『イルミナシオン』は男3人の三角関係を描いた名作です。
幹田はノンケですが、幼馴染の小矢に恋しています。その小矢は合コン&女好きの浮気性男。幼馴染で表向きの関係性は惰性の腐れ縁という体たらくぶりで、幹田は自分の恋心に限界を感じています。
そんなとき、抜群のコミュ力を持つチャラいゲイ・州戸にナンパされた幹田は、ほぼノリと勢いでそのまま抱かれてしまいます。そんな簡単にお洋服脱いじゃって大丈夫なんです!? と思いましたが、とてもあっさり致してしまいました。同性と寝てみただけの幹田ですが、州戸はその一回で幹田に恋してしまいます。
州戸→幹田→小矢
というこの不毛な三角関係。
州戸は幹田の身体だけを手に入れ、小矢は幹田の心だけを手に入れていた……のですが、小矢の性質を26年の付き合いで知り抜いていた幹田は、離れるくらいなら付き合おうと言った小矢を振ります。さらに、他に好きな人ができるまででもいいと縋った州戸のことも、結局は好きになることができずに振ってしまいます。
生真面目に州戸を振った幹田、なんだかとっても男前で惚れそうでした。これを誠意っていうんだな……。
そう。このお話、BLだというのに、男が3人も登場するというのに、なんとカップリング不成立のままお話が終わってしまうのです。
てっきり州戸は当馬で、最終的には小矢と幹田がくっつくと思いながら読んでいた私、読後呆然。え、どっちも振られるの!? マジで!!!!?
この終わり方によって強烈に印象に残る本作です。
ちなみに新装版になる際、10年ぶりにこの3人のお話が描き下ろされております。誰もカップルにはならなかったけども、それなりに楽しく暮らしているようで安心しました。BL界の人間関係だって、恋以外で繋がることがたまにはあってもいいよね……とほっこり致しました。仲よく楽しく暮らせているようで何よりです。
ちなみに州戸によって3Pが提案されておりましたが、残念ながら実行はされなかった模様です。
©ヤマシタトモコ/祥伝社