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2018.10.11

【日替わりレビュー:木曜日】『バスタブに乗った兄弟~地球水没記~』櫻井稔文

『バスタブに乗った兄弟~地球水没記~』

朝起きたら見渡す限りの水没with鮫、そして兄と一緒にバスタブへ……

笑っていいのか怖がっていいのかわからない。今まで見せたことがないような表情で私はこの作品を読んでいる。朝起きたら世界が崩壊していて、ともに家から脱出できた兄とバスタブに乗って鮫が人を食い散らかす海に航海へ出かける。そこから、荒唐無稽なパニック映画のような物語が始まる。

櫻井稔文先生の描く『バスタブに乗った兄弟~地球水没記~』は、主人公の春生が、17歳の誕生日を迎えた朝、起きたらあたりが水没していることから始まる。見渡す限り一面の水。いつもの住宅街は完全に海と化し、いたるところにが泳いでいる。なぜだかわからぬまま、春生は大嫌いな引きこもりの兄・夏生とともに、自宅のバスタブに乗って水没した街へと航海に出るのであった。

次々に人が鮫に食われていく様子はショッキングだが、箒をオール代わりに漕ぐ兄の容姿がそのシーンに負けず劣らず「濃い」。巨体に落ち武者のような禿げ方をし、パンツ一丁でバスタブの先頭(?)に立つ。中身はなかなかのクズだが、身を呈して弟を守ろうとするシーンもあり、時折長男気質を見せたりする。

なぜ水没したのかわからないまま、とにかく避難するために逃げる人々の姿はリアルだ。それでいて湿っぽさや悲壮感はない。ずっと、なんだか可笑しい。

この謎が作品の中で解き明かされるのかどうかはわからない。そもそも兄弟がバスタブに乗ってどこに行き着くのかもわからない。わからないんだけど、とりあえず面白いからいいか、と読者を納得させてしまう力がこの作品にはある。

というか、すでにこの絵面と設定を飲み込んでいる読者なら、超常現象で宇宙に行ってしまおうと、恐竜がどこかから復活して騒ぎだそうとも、ついていけてしまえるのではないか、という気すらする。

二郎ラーメンの上に牛ステーキが乗ってました、みたいな「濃さ」がある作品だが、唯一無二のクセになる感じは否めない。

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