2018.10.14

【日替わりレビュー:日曜日】『ゴブリンスレイヤー』蝸牛くも,黒瀬浩介,神奈月昇

『ゴブリンスレイヤー』

転生ではない、異世界ファンタジー『ゴブリンスレイヤー』。現在アニメが絶賛放送中の、WEB発ノベルのコミカライズ版で、例えば『ベルセルク』などを代表とする、ハードなダークファンタジーが好みの方にはぜひおすすめしたい作品です。(逆に、エログロや血生臭いシーンに抵抗がある方は避けた方が良いかもしれません)

ファンタジー世界において往々にして最弱の敵とされるモンスター・ゴブリンですが、小さな村や武力を持たない人々にとっては大きな脅威。この世界でも同様で、村を襲って略奪や人殺しをするし、慰み者にするために女を攫っていくという非常に厄介な存在です。

しかし、実力のついた冒険者にとっては退治に工数がかかる割には大した稼ぎにならないし、地味なザコなので武功を積みたい者達にとっても敬遠され、国としてもドラゴンやデーモンなどより大きな被害のある大きな脅威の方に対応の優先度をまわすため、多少駆除したとしても一向にゴブリンは減らず、弱き者達は苦しめられる日々を送っていました。

駆け出し冒険者にとっては対峙すると一歩間違えれば死が待っている、決して侮ってはいけない存在なのですが、1巻冒頭では新米冒険者のパーティーが初めての冒険にゴブリン退治を選択。

意気揚々と人助けを掲げ、自分たちには実力があると豪語し足を進める彼らですが、訪れた洞窟で遭遇したゴブリン達に「女魔術師」は腹を裂かれ致命傷を負い、「男戦士」は剣の扱いに手間取ってる間にリンチに合って惨殺、そして、「女格闘家」は捕まって激しく陵辱されてしまいます。

そして、その凄惨な様子を目の当たりにした「女神官」はへたり込み失禁。あわや絶体絶命、という瞬間、闇の中から小汚い甲冑を装備し、ゴブリンを片っ端から虐殺していく者が現れます。彼は、実力者であればあるほど相手にしない「ゴブリン」を異常なまでの執念を持って殺し続ける男「ゴブリンスレイヤー」。本作は、彼の壮絶な戦いの日々を描いた物語なのです──。

もう冒頭から、新米冒険者達がゴブリンに徹底的に虐殺、陵辱されていく様子がえげつないですし、特にゴブリンは女子の小水に敏感らしく、女神官がもよおしてしまった時のゴブリンの反応が気持ちの悪いのなんの…。最近よくあるかわいらしい異世界転生ものとは一線を画す、冷徹でリアルな展開が全体を通して繰り広げられていきます。

またファンタジーとはいえ、この世界では復活が無かったり、魔法を打てる回数にシビアな制限があることもポイント。死んだら死にっぱなしという、冒険者にとってはかなりハードモードの世界設計なのです。

そんな中、ゴブリンスレイヤーの強さが出だしから目立つため、結局こいつも”選ばれし勇者”とかなんでしょ? と疑ってしまいますが、チート能力とかではありません。あくまでもゴブリンを1匹でも多く殺す、という執念の元に度重なる死線をくぐり抜け、何度もトライ&エラーを繰り返して蓄積され続けてきた圧倒的経験値による強さによるもの。彼のこの狂人的ともいえるゴブリンに対する執着の理由も悲壮で、他の作品にはない重厚さを築き上げています。

そしてこのようなダークな世界観を描ききる、圧倒的な画力も本作の魅力。絶望的なシーンは目を塞ぎたくなるほど辛く、ゴブリンスレイヤーがゴブリンをごりごりと蹂躙する様は胸がすくような爽快感があり、非常にテンポ良く物語を読み進めることができるのです。

コミカライズとして、そしてファンタジー作品として凄まじく完成度が高く、アニメから入った方にも是非読んでもらいたい一作に仕上げられております。

最後に、本作にはいくつかの派生作品も出ていますが、マンガでは現在『ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン』『ゴブリンスレイヤー:ブランニュー・デイ』も並行して連載中。

『イヤーワン』は、「ゴブリンスレイヤー」がいかにしてゴブリンを狩るキラーマシーンと化したのかという前日譚、『ブランニュー・デイ』は本編を彩るモブキャラたちの物語を描いたサブストーリーとなっています。これらを読むと作品全体を、より深く楽しめるはず。本編と併せてぜひチェックしてみてくださいね。

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コミスペ! 編集部

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