2018.10.19

【日替わりレビュー:金曜日】『NとS』金田一蓮十郎

『NとS』

金田一蓮十郎先生による『NとS』の第1巻が発売されました。

デザートで連載していた前作『ライアー×ライアー』は、義理の弟を相手に、別人の女子高生に扮して恋模様を繰り広げるという、”タブー””隠し事”という2つの要素が取り入れられた良作でした。で、今回は、こんなあらすじになっています……

1年前、バイト先の喫茶店に来ていた小田さんにコーヒーを褒められ、惹かれてしまった新菜。そこからはマグネットのように引かれあい、すっかり恋人同士になったふたり。高校2年の春、「少し忙しくなる」という小田さんの言葉を思い出していた新菜の前に現れたのは、新しい担任の先生。って、小田さん…!? くっついたり、離れたり、想定外ラブ、始まります♥

というわけで、教師と生徒ものです。はい、今回もタブー要素あります(ありがとうございます)。

序盤、小田さん新菜に気づかないので、そのまま生徒であることを打ち明けずに正体を隠すという面白い展開に。学校では生徒として過ごし、プライベートでは普通に恋人として過ごすというちょっとした二重生活。けれどもさすがにずっとそんな生活もしていられないので、新菜は自分の正体を打ち明け、さらにお互いの将来を気遣い、お別れをすることに

かつて付き合っていたことを隠しながら、普通に教師と生徒という関係に戻ります。この、過去を互いに隠しながら学校生活を送るというところが、いうなれば”隠し事要素”と言えるでしょうか。今回もしっかりと、美味しいエッセンスが取り込まれています。

心とは裏腹に、倫理的観点から教師と生徒という元の関係に戻った2人。しかしそう簡単にその関係を、その感情を、清算できるものでもありません。お互い色々と見知ってしまっている分、気を抜くと距離が近くなりすぎてしまったり、意識しないでおこうと思っていても、意識してしまったり。それに何より、避けよう避けようと行動しても、なんの因果かやたらと鉢合わせてしまうシーンが多いのです。

これが磁石のN極とS極になぞらえた所以ですが、こういうあからさまな神の手、好きですよ。努めて平静を保とうと頑張っている中、不意に嬉しさや照れで表情が崩れてしまう瞬間、思わず読んでいる自分まで頬が緩んでしまいます。

タイトルからして流れに抗うことは難しそうですが、この2人は、自分の意思に逆らってどこまで抵抗を続けるのか。どう転んでも、どう暴走したとしても、このタイトルだからこそ、ニヤニヤできる展開、そして結末にしかならなそうで、妙な安心感がありますよね。

金田一蓮十郎作品は、「どういう結末を迎えるのか……というスリルを楽しむ」というよりは、「この面倒な設定の中で、どういうプロセスを辿るのか……」というところを楽しむものだと個人的には思っていますので、今回もそれを存分に楽しむことができる舞台設定となっているのではないかと思います。

一風変わった教師と生徒の恋模様、一緒に楽しんでみませんか?

この記事を書いた人

いづき

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