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2018.10.20

【日替わりレビュー:土曜日】『デッド・オア・ストライク』西森生

『デッド・オア・ストライク』

野球、サッカー、テニスなど球技を題材とするフィクションにしばしば登場する「魔球」。野球であれば、ピッチャーが特殊な軌道や独特のタイミングでボールを放って打者を翻弄する投法を言いあらわす。

マンガの歴史的には、例えば時代劇画において忍者が「忍法、〇〇〇!」と術をかけたり侍が「秘剣、〇〇〇!」と奥義をくりだすシチュエーションの系譜にあると考えられ、白熱する試合の中でアグレッシブな“必殺技”を演出して盛り上げてくれる存在だ。

そんな魔球という存在をたっぷり堪能したい、という時におすすめなのがこちら。「GANMA!」で2015年から連載中の『デッド・オア・ストライク』という作品である。

人間の格がすべて野球の実力で定められる究極の野球エリート養成高校を舞台として、とんでもない魔球や「魔振」(魔球のバッティング版)が次から次へと登場する超攻撃的バトル野球マンガである。

島暮らしで野球には詳しくないものの、実は高い実力を秘めた主人公が養成校へ入学してきて……と文章にするとオーソドックスなようだが、実際の展開は「学校へ向かう電車に乗ると外から大量のボールがショットガンの弾のように撃ち込まれて車両が完全破壊され、車体を貫通してきた球を素手でキャッチした者だけが入学を許される」と第一話の冒頭から脳みそをかきまぜられるような怒涛の立ち上がりをみせてくる。

その後、三軍から始まって頂点に一軍が君臨する校内の階級を一足飛びしようとする主人公の前にさまざまな猛者が立ちはだかり勝負を重ねて……というのが大筋なのだが。

・敵サイドの選手たちが大声で野次をとばすと、空気振動が衝撃波になりバッターを吹き飛ばす
・ボールが分身して一投げで、三振とデッドボールを同時に奪う
・背中がガラあきだ! とキャッチャーが牙つきミットでバッターの背後から襲いかかる
・ピッチャーフライになった球の先端が、鋭くとがって氷柱落としのように突き刺してくる
・水中でおこなわれる試合で、スイングの瞬間に電気を放出してバットの届かない位置からボールを弾き返す
・ネガティブな選手が、負のオーラで障壁をはって守備の返球を空中で止めたすきにホームイン

などなど、人間の限界も物理法則も野球のルールもぶっとばす絵ヅラが目白押し。

通常、野球マンガはあくまで野球を描くことが第一義である。つまり「試合展開を盛り上げるために魔球をくりだす図が描かれる」という順番になる。
……のだが、本作はその構造をひっくり返して「魔球を描くために試合を展開させる」というアクロバットを見事に成立させている。

ポイントは、決して劇中に「ありえないだろー!」みたいなへたなツッコミを描いたりせず、あくまで登場人物が大真面目に技をぶつけあい、また観戦者も真剣に見ているところだ。そうではなくては、この高い熱量を維持できるものではない。

みなさんもぜひ本作の、“魔球を目的化した野球”によってテンションを右肩上がりにしていく世界観にどっぷり染まっていただきたい

試し読みはコチラ!

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この記事を書いた人

miyamo

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