『今はセックス以外したくない』

今までいろいろ気を遣ってつつましく、BL的肌色シーンは直截な表現を使わずにレビューしてきたというのに、ここにきてタイトルがこれですよ。なんということでしょう！　ここまでド直球にタイトルにされると、もう開き直ってもいいんじゃないかと思ってしまいますね……。

表紙のフォントは、なんというか、ちょっと面陳する書店を慮ってか、レジに持っていく読者の心情に寄り添ってか、パッと見は文字として認識しにくいデザインにされているんですよ。だというのに、オビに黒々と読みやすくバーンって直球ワードが並んでおり、デザイナーさんの配慮（？）はもう粉々です。いいぞいいぞもっとやれーっ！

ちなみに作者の藤峰式先生は、自堕落に朝からヤッてる男たちの話が描きたい！　と動機を正直に告白しており、正直は美徳だなとあらためて感じ入った次第です。

こんな感じで欲望に忠実な気配しかない作品、組み合わせとしては、

元ホストのラノベ作家×不運な美形大学生

となっております。

不運なというか、明確に男運がないんですよ。彼氏がDVクズ男だったのです。無理やり別れを切り出したら、最中を撮影した写真をばら撒かれてしまい、怖くて外に出られなくなってバイトにも行けなくなり、家賃滞納で家を追い出されて、どうしようもなくなったところを元ホストに拾われます。

元彼のクズすぎる教育のせいで、一宿一飯の恩に、当然のように男相手に身体を差し出そうとする受ちゃん。元彼のクズ度もさることながら、もう大学生なんだからちょっと一般常識に通暁しような……と後ろから肩をトントンしたくなります。

そんな受・つづりにドン引きしながらも結局は抱く元ホスト。しかもさすが元ホストと言うべきなのか、テクも持ち物も素晴らしく、お礼のつもりがつづりはどっぷりはまってしまいます。捨て犬を拾って来るまで、寝て起きて食べる以外それしかやることがないというレベルで耽溺しちゃったんですから本当に気持ちよかったんですね……。

あからさまに身体から始まった恋ですが、もちろんちゃんと、後から心も付いてきますのでご安心ください。ついでに最後の方でDVクズの元彼も精神に強烈なカウンターパンチくらって凹んでましたので、読んでる側の溜飲も下がります。

何も考えずにとてもBL的なBLが楽しめますので、肌色シーンに抵抗がない皆様、ぜひ疲れた時や即物的萌えが不足した時に手に取ってみてください。私はとってもHP・MPが回復しましたよ！！！

©藤峰式/海王社