2018.10.30
【日替わりレビュー:火曜日】『GIGANT』奥浩哉
『GIGANT』
よく「出オチ」なんて言葉がネガティブに使われますけど、出た瞬間、目立っているだけでも大成功ですよ。特にWebの記事は、最初の一行がつまらないと、ブラウザバックされちゃいますからね。毎回頭を悩ませる最重要ポイントです。例えばこのコラムのように!
そんな出だしのインパクトが、この上なく上手だと感じるマンガ家が『GANTZ』『いぬやしき』の奥浩哉先生。この方のマンガは毎回、非常に目を見張る導入部を描かれます。『GIGANT』もそうでした。
『GIGANT』を一行で説明すると、「平凡な男子高校生とAV女優のボーイミーツガールもの」です。えっ? ど、どういう事!? もうこれだけで内容が気になりませんか?
スクールカーストでは下の方、クラスでもまるで目立たない男子高校生・横山田零の淡々と描かれる日常シーンからはじまります。そもそも奥浩哉先生の画風は、背景を細かく描きすぎるくらい描きこんでいて、人物がそこに溶け込んでしまうカットすらあります。
しかしそれは、現実における日常の光景そのものなんですよね。街を散歩している時に通りすがる人がいても、我々は動いている背景として認識しているわけです。
そこにAV女優であるパピコの身に起こったトラブルと、謎のサイトが出現して超常現象を起こさせてしまう、2つの事件が起こります。
カメラを通して街中を見ているような、徹底した客観的視点で描かれる日常。そこから非日常へシームレスに移行することで、物語への没入感を生んでいる技巧がさすが。何かこれから、とんでもないことが起きるかもという「ハッタリ力」というべきか、ブラフの効かせ方がハンパないんです。
それにしても空からXXXを降らせるとか、悪趣味っすなー(褒めてます)。『GANTZ』は平成を代表するフェチ&グロ傑作の一つだと思うんですけど、奥作品には露悪的で、気持ちをモヤモヤさせる一面を感じます。
普段は爽やかな読後感のハッピーエンドこそエンタメだと信じている筆者からすると、イレギュラーな作品。でも目が離せないんです。まるでパピコのクズ彼氏のように依存してしまう不思議な読み味を秘めているんです(褒めてますよ)。
©奥浩哉/小学館