2018.11.02

【日替わりレビュー:金曜日】『きょうだいごっこ』安斎かりん

『きょうだいごっこ』

同居もの、いいですよね。少女マンガの王道です。年頃の男女がひとつ屋根の下だなんて、現実では絶対ありえるわけないんですけれども、どうしてこう夢中になっちゃうんでしょうね。そうか、現実ではありえないからこそなのか。というわけで、また新たな同居ものが登場してきました。安斎かりん先生の『きょうだいごっこ』です。

同居ものというと、再婚連れ子パターンか、親の事情で居候パターンというのがメジャーかと思いますが、本作は後者。両親の海外赴任をきっかけに、言い渡されたのは、親の上司の子供たちとの同居。行った先で出会ったのは、超絶不仲なイケメン兄弟! 学校でも有名人なふたりと”きょうだいのフリ”をすることになるのですが……というお話。

同居もので、兄弟が2人という欲張り設定な本作。でも冷静に他の作品を振り返ってみると、あるな。『お兄ちゃんと一緒』なんか4人でしたわ。そう考えるとむしろありえるレベル(いや、ありえない)。

同居することになる兄弟ですが、お兄ちゃんのほう・美弦は、クールで無愛想な低体温系のイケメン。一番年上ということもあり、比較的しっかり者という印象です。一方の弟・有紀のほうは、兄とは対象的に人懐っこく女性慣れしている感じ。友達と遊び歩いて、家にもあんまり帰ってこないこともしばしばという自由人。

そんな正反対な性格であるため、ぶつかりあうことも多く、そんな犬猿の仲のような兄弟の間を、新参者のヒロイン・璃央が取り持つという構図。

璃央は一人っ子だということもあり、”きょうだい”に幼い頃から憧れていたのですが、そんなこともあって同居生活には比較的前向き。イケメンだけれども無茶苦茶な兄弟を前に、最初こそビクビク遠慮していたものの、言いたいことを飲み込み続けられるタイプでもなく、見かねてズバッと本音を言ってお姉ちゃん的に仲裁します。

学年的には真ん中なんですけれども、その行動とメンタリティは一番年上っぽいというか。バランスを考えて真ん中に据えたのだと思うのですが、パワーバランスだけで言うとそうはなっていないところが面白いですね。妹的に甘えるシーンも、それまでの過程を知っているからこそ、お姉ちゃんの弱いところを垣間見れたみたいな感じがして、なんだかくすぐったいのです。

同居ものですから当然恋も芽生えていくわけですけれども、1巻ではどちらかというと兄弟としての絆を深めていく方向にシフト。それまでバラバラだった2人が、璃央という楔を打ち込まれたことによって、徐々に関係性に変化を見せていく過程が面白く微笑ましいです。

もちろん恋愛の匂いもしつつあり、互いがどう牽制し合い、アプローチしていくのか。また学校では面倒なので「璃央と2人は実の兄弟」としている隠し事がどう崩れていくのか等、今後の展開に向けて楽しみな点が多数あります。

「きょうだいごっこ」というタイトルは言い得て妙で、”きょうだいではいられない”と感じる瞬間が璃央にどのようなカタチで訪れるのか、続きが楽しみで仕方ありません。

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いづき

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