2018.11.21
【日替わりレビュー:水曜日】『電撃!文庫の昼ごはん!!』えらんと,タカハシユキ,電撃文庫編集部
『電撃!文庫の昼ごはん!!』
あの有名ラノベに出てきた料理を作ってみよう!
電撃文庫25周年企画として、有名ラノベに出てくる食べ物を実際に作ってみよう、というかなり変化球なグルメマンガ。
もちろん全部食べられるもので、きちんとしたレシピも掲載されている。
水道橋文音(すいどうばし・あやね)は、電撃文庫が大好きな高校2年生。好きすぎて自分もその世界に浸り続けたいと考えた結果、キャラクターのコスプレをするのみならず「電撃作品に登場する料理も食べてみたい!!」という考えに至った。
その時家庭科室で出会ったのが、料理研究部に入っている田逆航琉(たさか・わたる)。高い料理の腕前だけでなく、レシピを見抜ける技術の持ち主。そこで彼女は閃いた、電撃文庫を読ませたら料理が作れるのではないか。
彼女は大好きな『エロマンガ先生』を、彼に読ませる。お題はヒロイン紗霧が兄に作ってもらって食べている料理。
電撃文庫ファンなら「あれか!」と比較できて、楽しさは何倍にも膨れ上がる作品。しかし全く読んでいない人も青春グルメマンガとしてきっちり楽しめるだけでなく、原作ラノベの魅力がそれぞれ引き出されているので、作品ガイドとしても成り立っているのがこのマンガの強いところだ。
文音と航琉の関係がニヤニヤもの。2人は実は小さい頃隣に住んでいた幼馴染で、忘れていたところたまたま出会った仲。大きくなった今、元気いっぱいにコスプレしながら電撃文庫を持ってくる文音と、付き合っているうちに料理が楽しくなってくる航琉のワイワイした様子がなにより楽しそうだ。お前らがラノベか。
登場する料理は『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』のようなリアル寄りのものから、『キノの旅』『ソード・アート・オンライン』など、趣向を凝らしていかないとできないファンタジー料理まで、扱う幅はかなり広い。
中でも『とある魔術の禁書目録』に出てくる珍メニュー、「いちごおでん」と「黒豆サイダー」のレシピは、かなり実験的だ。
料理、ラノベ紹介、高校の青春がバランスよく配合された作品。できれば他の電撃文庫作品、もっといえば他のレーベルのグルメも、このようなラノベチックなマンガで読んでみたいところ。
©えらんと,タカハシユキ,電撃文庫編集部/KADOKAWA