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2018.11.23

【日替わりレビュー:金曜日】『霜月先生の甘くない恋愛講座』香魚子

『霜月先生の甘くない恋愛講座』

香魚子先生の新連載『霜月先生の甘くない恋愛講座』の第1巻が発売されました。

 『さよなら私たち』『隣の彼方』など、珠玉の読切で期待の新鋭として話題をさらったのも今は昔。若手のゾーンを抜けて、すっかり中堅的ポジションに落ち着いてきた感のある香魚子先生。

単行本も着実にその巻数は伸ばしてきているものの、デビュー時の期待感からすると、ここらへんでどでかい一発をかましてもらいたいところであります。で、送り込んできたのが本作。

物語の主人公は、成績優秀で、何事も事前準備に余念がなく、なんでも自分でできちゃうしっかり者の高校生・愛理。そんなしっかりした性格に加えて、顔だって悪くないはずなのに、なぜだか超絶モテない。自分なりに頑張っているのに、一向に彼氏ができず、その理由がわからないで猛烈に悩み中。

そこに現れたのは、母のすすめでやってきた家庭教師の霜月先生。イケメンで優しく、モテるという噂をきいて、愛理は恋愛相談をすると、まさかの毒舌アドバイスが……! だけど、そのアドバイスは的確で、その奥には優しさが隠れているようで……? というストーリー。

ヒロインの愛理がモテない理由は簡単で、なんでも出来すぎてしまうがために可愛げがないところ。勉強も出来るし、デートをしようものなら段取りは完璧で、それこそ何一つ失敗しない。頑張って、場を仕切ってリードして、なんなら間違っている人に注意だってするし、人間的に極めて立派。そして彼女自身もそれを誇っているわけですが、それが恋愛に結びつかないことに気づけていない。

 「隙が無い女性」とはちょっと違っていて、可愛げがなさすぎて、そもそも狙うべき相手としてカテゴライズされないという感じなんですよね。そしてそんな彼女に対して「いや、そりゃあモテないでしょ。その理由は……」なんて、ズバズバ的確なことを言ってくれるのが、霜月先生というわけです。なので、口が達者な愛理も全く反論できないという。基本的にはそんな、ヒロインの空回りとストレートなダメ出しの連続を楽しむというコメディ。

表向きは家庭教師なんですけれども、元々極めて成績優秀な愛理は勉強を教えてもらう必要もありません。流れで思わず恋愛相談をしたことをきっかけに、勉強ではなく、恋の家庭教師(安っぽいエロさを感じさせるフレーズですね)として、モテテクニックやメンタリティを学ぶようになるわけですが、その指導方針は毒舌ストレート。

歯に衣着せぬ物言いがいっそ清々しいぐらいなのですが、「いや、でも言われてもしょうがないよな……」と感じられるぐらいに、愛理が恋愛ど下手くそというのも、その関係に拍車をかける一因となっています。

意地悪なのに、なんだかんだよく付き合ってくれて面倒見の良い霜月先生。ちょろい愛理ですから、自然と彼に惹かれていくことになるのですが、当の霜月先生の心は全く読めません。

可愛げのない愛理ですが、ダメ出しされてたじろぐ姿というのは可愛らしく、霜月先生から見たら結構可愛げある女の子として映っているんじゃないかなぁとは思うのですが、いかんせん無表情なので……。でもそんなつれない先生だからこそ、不意に優しくしてくれたりしたらキュンとしちゃうわけですよね。イケメンずるい。

一方愛理は突っ走り型なので、物語は早めに動いていくことになります。1巻ラストでは早速大きな出来事があり、テンポ良く物語が転がっていくのは読んでいて心地よいです。

香魚子先生の初期作品のダークな印象からはちょっと離れた、ずいぶんと毒気の抜けたキャッチーな作品という印象です。そこに少しばかり寂しさは覚えつつも、格段に間口は広がっており、多くの人にオススメできる内容となっています。イタズラな性格の年上男子に翻弄されたい、そんなのがお好みな方、ぜひとも本作をどうぞ。

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この記事を書いた人

いづき

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