2018.02.13

【まとめ】BLの雰囲気が味わえる朝チュン系作品

BL(ボーイズラブという、男同士の恋愛をテーマにしたジャンルの総称)って、気になるから試しに読んでみようかな。となっても、冗談ではなくすでに星の数ほど出版されているBLコミックから、ちょっとした好奇心を満たす程度のBL要素を含んだ作品をチョイスするのは大変です。

何気なく手に取った初のBLが、ディープな腐女子に向けた濃厚肌色シーン満載の1冊で、それがうっかりトラウマにでもなってしまったら、読んだ本人もBL界にも大変な損失です。

ひとりでも多くの人にBLを楽しんでもらいたいと願う、この道20年以上の腐女子としても大変不本意ですので、BLの世界を覗いてみたい人にお勧めする、ハードな肌色シーンのない朝チュン系(エッチシーンに入った! と思ってページをめくったら行為のすべてが終わって朝になっていたという展開のこと。転じて本番描写がほぼない作品を指します)の何作かをご紹介してみようと思います。

『マウリと竜』

ファンタジー系の短編集『マウリと竜』(元ハルヒラ/リブレ出版)です。各地を巡っている神様と人間というカップリングになります。ほのぼの童話のような絵柄とストーリーなので安心してお召し上がりください。

とにかく神様が可愛いのです。人間にベタ惚れなのです。

いろんな姿かたちをしている神様は、心を通わせた相手と同じ姿になります。人間と相思相愛になったら、神様が人に変化するんです! 表題作のマウリと竜では、人間のマウリ(受け)は村を守るために竜に差し出された生贄だったのですが、食べられるわけではなくてひたすら竜(攻め)に愛でられます。相手が神様ということもあって、子供まで生まれます。まさにファンタジー。

各作品、人間に萌えたり惚れたりする神様に読者が萌えること請け合いです。どのお話も最後は「めでたしめでたし」なおとぎ話風のBLですので、安心してキュンキュンしながら読めますよ!

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『弦巻先生の作家生活』

現代で小説を書いて作家デビューをしてしまった鬼のイチイ(PN弦巻)が人前に出るために、人間である槇をだまし打ちのような形で契約して、隷属させてしまう『弦巻先生の作家生活』(tacocasi/東京漫画社)。鬼相手にうっかり名乗るのも悪いですが、突然目の前に鬼があらわれるなんて、普通に生きていたら予想できないので仕方ないですね……。

そんな状態で始まる同居生活。徐々に惹かれあっていく二人。鬼のくせにあまり強くないイチイを過保護に見守る同族の兄弟や、下心むき出しで言い寄ってくる人間の作家仲間に槇がもやもやすれば、鬼の世界に帰省しているときに家にやってきて槇と打ち合わせをする女性編集者にハラハラするイチイ。本人たちが恋心を自覚する前に見ている側からはバレバレなこの初々しい感じがたまりません。お話が進むにつれておたがいに対する二人の気持ちが深まっていく様子は必見です。

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『はたらけ、ケンタウロス!』

上半身はヒト、下半身は馬の姿をしている、千年以上の時を生きるケンタウロス。そんな彼らと、寿命数十年の人間との関わりは、人間に先立たれる形で終わります。そんなしんみりした大前提を吹き飛ばすノリの良さで、ケンタウロス×人間のいろんなカップルのストーリーをオムニバスで味わうことができる『はたらけ、ケンタウロス!』(えすとえむ/リブレ出版)。

メインストーリーでは、会社の先輩(人間)と後輩(ケンタウロス)による、漫才のような日常が繰り広げられます。BLですが、最初のお話の彼らはキスすらしません。彼らはお互いに恋愛感情を持っている? という基本的なところすら、読む人の判断次第という微妙なラインのまま終わります。

蕎麦屋の見習い(ケンタウロス)とラーメン屋の見習い(人間)のエピソードも、目指すところが一致して一緒にラーメン屋台を始め、人間が年老いるまで一緒に過ごしているのですが、肉体的な恋愛描写はありません。モデル(ケンタウロス)とデザイナー(人間)の場合も、下半身が馬の姿をしているという、ありのままの自分を認めてくれたデザイナーと組んで仕事をするようになりますが、直接的な恋愛描写はありません。一番わかりやすくBLなのも、土地を盾に意に沿わない女性との結婚を強いられそうになった青年(人間)を、ケンタウロスが式場から攫うような形で連れ去り、人間が年老いるまで寄り添っているというお話です。

でもどの話も、漂う空気はしっかりBL。この空気感をぜひ味わっていただきたいと思います。

『セブンデイズ MONDAY→THURSDAY』&『セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY』

正統派の学園物BLです、スクールラブです! 顔は素晴らしくイケメンなのに、がさつで見た目と中身のギャップが激しすぎるせいで、しょっちゅう告白されるのにすぐフラれてしまう残念男・弓弦と、誰かを好きになりたくて1週間ごとに告白してきた相手と付き合うけれども、結局好きになれず1週間で相手を取りかえてしまうウィークリー男・芹生の、ハートフルな1週間のお話、それが『セブンデイズ』(橘紅緒,宝井理人/大洋図書)です。

ふとした流れで弓弦が「おれと付き合ってよ」と言った月曜日からお話は始まります。月曜日に告白してきたらたとえ男の先輩でも付き合いが始まる……BLならではの展開です。

なんとなく「付き合ってよ」とは言ったものの、まさか本当に付き合うことになると思っていなかった弓弦と、当然のようにお付き合いを開始する芹生。彼らは学校生活を送りながら高校生らしからぬ清く正しい関係を始めますが、そもそも最初から1週間限定の付き合いだと思い込んでいる弓弦と、相手を好きになれるかどうか1週間かけて判断してきただけで、好きになれたらその先も付き合いたい芹生は、最初の段階からすれ違っています。

それでもお互い、一緒に過ごすうちに少しずつ相手に惹かれていきます。そして根本的にすれ違っている二人は、しっかり相思相愛になっているにも関わらず、なかなかお互いの気持ちを受け取れません。じれったい! もどかしい! しかしそこがハートフルで萌える! というじらし系の青春が2冊にわたって繰り広げられます。

ちなみに作中、BLっぽい描写はキスだけ。キスだけだったのです。

最後に弓弦がビシッと正面から告白をキメて、晴れて相思相愛の仲になったにも関わらずキスしかしません。……安心して読み始めてくださいね!

以上、雰囲気の違う朝チュン系の作品を新旧合わせて4作、ピックアップしてみました。これは気になるかも? という作品がありましたら、ぜひ読んでみてくださいね。男同士の恋愛といわれると身構えてしまうかもしれませんが、自分以外の誰かと心を通わせるお話の一形態と思ってフラットな気持ちで一歩を踏み出していただけることを願っております。

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この記事を書いた人

アキミ

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