2018.12.14

【日替わりレビュー:金曜日】『YOU MY BABY』ともすえ葵

『YOU MY BABY』

ともすえ葵先生による『YOU MY BABY』の単行本が発売されました。えーとですね、ものすごく良かったです。(レビュー記事にあるまじき圧倒的語彙力の欠如)

とりとめのない語りの前に、まずはあらすじ紹介から……

「女らしさ」とは無縁、ましてや恋愛なんて想像もつかない由宇。高校入学してすぐに隣の男子、天に「かわいい」と言われ、思わず反発してしまいます。そんな由宇を「かわいい」じゃなく「愛らしい」と言ってくれる天の優しさに戸惑いながらもひかれていき……。初恋のむずがゆさがいっぱいです!

内容はどストレートな初恋物語。コメディ的要素も一切なく、青春&恋愛100%です。

女らしくない自分に対して「かわいい」と言ってくれた男の子・と過ごすうち、徐々にはっきりとしてくる恋心。彼だけが自分を見てくれている。なんなら、特別扱いしてくれているような気もする。けれどもはじめての感情に、どう振る舞えばいいかわからずから回ったり、他の女の子に優しくしている姿を見て思わず嫉妬したり……自身のコンプレックスとないまぜになった初恋のほろ苦さや甘酸っぱさが、丁寧にみずみずしく描かれております。

何が良かったかっていうと、その醸し出す圧倒的90年代感

描き込みすぎない絵柄や、説明的でない短い言葉が行き交う会話だったり、コンプレックスを抱えつつもそれに負けないように元気に振る舞う素直じゃないヒロインだとか、ヒロインと正反対に身体がデカくて優しい性格の男の子との凸凹っぷりだったりとか、そこかしこに「あの日あの時読んだ、黄金時代の素晴らしき少女マンガ」の匂いが感じられるんですよね。

人工甘味料的な甘さは無く、苦味・酸味多め。その先に、清涼感のある甘さがほのかに感じられるようなバランス感。コンプレックスや嫉妬心をしっかりと描きつつ展開する感じだったり、断片的な会話のやりとりなど、いくえみ綾フォロワーっぽさも感じられるのですが、いくえみ作品ほど重たくならず、受ける印象はより明るく爽やか。

この自分が抱いた「良かった!」という感情をうまく言語化できればよいのですが、正直ここまで書いてもまったく伝わってくれる感じがしないです。個人的には、平成最後を締めくくるに相応しいぐらいに感じているのですが、実を言うとこの物語そのものにメチャメチャ感動したとかいうわけではないのです。それでも自分がここまで引き込まれたのは、この作品を通して、1990年代、2000年代と夢中になって読んできた少女マンガたちの息吹を感じることができるから。1冊を通しつつ、何冊も何十冊も振り返っているような感覚に陥るんですよ。

なので、なんなら人によっては凡庸に映るかもしれない。けれど確実に、自分のようにこの作品が心の琴線に触れる人ってのがいるはずなんです。1巻完結なので、取り上げられるのはこれがラストチャンス。だからこそ、力いっぱいオススメしたい。

少女マンガが好きな人みんなに読んでもらいたい『YOU MY BABY』、オススメです。

試し読みはコチラ!

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いづき

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