2018.12.16
【日替わりレビュー:日曜日】『ダメな彼女は甘えたい』よしだもろへ
『ダメな彼女は甘えたい』
テレビアニメ化もされた和風ファンタジーラブコメ『いなり、こんこん、恋いろは。』を描いた、よしだもろへ先生が現在「月刊少年マガジン」で連載中の作品、『ダメな彼女は甘えたい』。
12月4日からマンガアプリ「マガポケ」での並行連載も始まったので、この機会にぜひお手にとってみて頂きたくピックアップいたします。
人の頼みを断らないお人好し男子高生・上埜一等。両親が失踪して一人暮らしの彼が遭遇したお隣さんは、眼鏡を外せばとびきり美人だけど普段はだらしない女性漫画家・野薔薇ひふみ。甘えんぼで依存体質な彼女との、隣人生活が始まる!?「ねっ これからも 甘えちゃっていーい…?」(公式あらすじより)
本作は、年上お姉さん×男子高校生のラブコメディ。表紙やタイトルからはちょっと艶っぽい雰囲気を漂っているものの、実のところ中身は「セクシー」というわけではなく、恋愛の描き方も控えめ。そして、かなりギャグ要素が強めの作品に仕立てられています。
そして、前述した『いなり、こんこん、恋いろは。』のうか様と燈日や、『色は匂へど』のいろはと純など、先生の過去作でも色々な形で年の差ラブが展開されてきましたが、今回は2人とも恋愛というものにめちゃくちゃ疎い、という点が特徴的です。
まずヒロインである、だらしないマンガ家の隣人・ひふみさんはバキバキのオタクで人見知りなので、全くもって3次元に興味がありません。そして、そのお相手・高校生の一等くんは、不出来な親が男をとっかえひっかえしていたのを見ていた影響で、恋愛とかにはそもそもピンとこない性格。
この、土台として恋愛に鈍感な2人なのですが、そんな中でもひふみさんの甘えんぼな面と、一等くんのお人好しで甘えさせやすい面が合致し、すぐに仲良しに。お互いどちらかというと、姉妹のような認識でお話が進んでいきます。
ひふみさんはメガネを外してオシャレをすれば、ほんとはめちゃくちゃキレイなんですが、彼女自身もその自覚がない上、普段はビン底メガネをかけて、髪の毛もボサボサという出で立ち。また、運悪く彼女のキレイモードに一等くんはなかなか出くわさないため、基本的に彼女のダメ女な姿しか見えておらず、余計に恋愛に進展していきません。
例えば、疲れたひふみさんをマッサージしたり、風邪を引いた体を拭いてあげたりと、ちょくちょくえっちな感じになりそうな展開も、一等くんから見たビジョンでは、ダメなお隣さんにしか映っていないのが笑えます。
そんな恋愛に鈍感な2人ではありますが、日々の生活を共にするごとに、特にひふみさんの方が潜在的に嫉妬や、ドキドキを意識し始めます。それに対して、一等くんの心の進捗が一見いまいちなのが気になるところですが、今後どのように転がっていくのかとても楽しみです。
また冒頭でギャグ要素が強いと書きましたが、ネタが入りこんでくるタイミングやワード選びが絶妙で、終始ストレス無くアッパーなテンションを保ちながら笑いを提供していく様は、よしだ先生のギャグセンスの高さを物語っています。(特にひふみさんの「だらしなさ」と「オタク像」の描き方がかなり容赦なくて、ヒロインをそんな風に描いていいのか!?って思う程崩して描かれたりして、めちゃくちゃおもしろいんですよね。)
ヘタにポエミーな感情の描かれ方もなく、ラブコメとして非常にバランスが良い秀作である本作、心からオススメ! ではあるのですが、なんと先生のブログでは2巻で終わる、との書き込みが……。
もしそうなのであれば、いちファンとしてはとても残念ですが、逆に最後まで勢いよくブチ抜けていく様子を一緒に見守って参りましょう。
©よしだもろへ/講談社