2018.12.20

【日替わりレビュー:木曜日】『ダルちゃん』 はるな檸檬

『ダルちゃん』

自分の生きづらさを解消するためには、失うものもある

どこに行っても馴染めない。世間一般的に「普通」とされることに違和感がある。でも、それを表立って言えば「変なやつ」と思われる。だから、今日も空気を読んで、差し障りのない会話に乗っているフリをして、「普通の人」に擬態して生きている。

そんな人は、きっと多いだろう。しかし、それは決してネガティブなことばかりではない。「他人と違う部分がある」と知っていることは、強さにもなるはるな檸檬先生が描く『ダルちゃん』は、そういった勇気を与えてくれる作品だ。

主人公は、ダルダル星人の姿を隠して、一生懸命に「働く24歳女性」に「擬態」するダルちゃん。気をぬくと、普通の人間とは程遠い、だるだるとした容貌になってしまう。だから毎日それっぽい服を着て、それっぽいメイクをして、それっぽい会話をしながら、普通の人として生きている。変なやつと思われたらいけないから。でも、それって、なぜ「いけない」のだろうか。ダルちゃんは、トイレでダルダル星人に戻るひととき、気持ち良さそうに顔をゆるめるのだ。

「ダルダル星人」という一見ファンタジックな設定はあるが、この作品には、きっと多くの人が感じたことがあるであろう「普通の人になろうとしてもなれない生きづらさ」が描かれている。

読者の多くはきっと、自分と「ダルちゃん」を重ね合わせて見るだろう。そして、彼女が自分の生きづらさをどう解決していこうとするのか、そして、誰も傷つけずにその生きづらさを解決することは不可能なのだ、ということを知る。

ダルちゃんは、作中で「詩」と出会い、のめりこんでいく。擬態しているダルちゃんが、はじめて自分本来の気持ちを綴る。それはだんだんと周囲に評価されていくが、同時に、ひとつかけがえのない存在を失うことにもつながっているのだった。

「生きづらさ」を感じている(男女問わず)多くの人にこの作品は勇気を与えてくれるだろう。そして同時に、それは都合がいいばかりの絵空事ではなく、ときには代償も必要な、ストイックな生き方でもあるのだ、ということを教えてくれる。読後、自分の中の「譲れないもの」はなんだっけ、と考えさせられた。

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この記事を書いた人

園田 もなか

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