2019.01.09

【日替わりレビュー:水曜日】『ストーカーズ』ハナツカシオリ

『ストーカーズ』

明るく楽しい、充実のストーカーライフ

女子高校生の乃咲(のざき)は、男子高校生の佐伯優太のことを、なんでも知っている。実際は学校も違うし、話したこともない。けれども早朝には彼のゴミを漁り、同じ電車に乗ってこっそり観察。彼のスケジュールを記録して、ネットの人間関係をチェック。ずっと後を追いかけている。

ストーカーだ。

隠し撮り、ネットストーキング、ストローやティッシュの収集、シュレッダーにかけた紙の貼り合わせ。やりすぎな行動を繰り返す彼女だが、佐伯に自分の存在を知らせようとは一切しない。ある日、佐伯のゴミの中から、手紙を見つける。ラブレターだ。その時乃咲の心に生まれたのは、佐伯の見たことない表情が見られるのではないか、という希望だった。

多種多様なストーカーを集めたオムニバス。やっていることは全員かなりギリギリ、あるいはアウト。謎解きのようなミステリー要素も多い。人間の心理戦のような部分では、ゾワッとするシーンもある。

ただ、かわいらしい絵柄で、ポジティブなストーカーたちが描かれているので、全体的に雰囲気は明るい。

マンガ家の先生に憧れて住所を特定しようとする女性、隣の家のお兄さんが好きで付け回す少女、人間関係づくりのためにネットを駆使して相手を調べ上げる青年。ストーキングと言っても、必ずしも恋愛がらみではない。冒頭にあげた乃咲の場合、彼女が追いかけている少年が誰かと付き合い始めても、そこに嫉妬が生まれていない。見ている事自体が好きなのだ。

乃咲のように飛び抜けたストーキング技術を持っている人間もいるが、基本的には「髪の毛を拾う」「SNSを検索する」など、誰にでもできることばかりが描かれている。さすがに盗撮や、郵便受けを漁るのは犯罪だけども……。

感情の根は様々なれど、これは人間の情報を集める人々の、努力と悲喜こもごもを描いた作品。相手に干渉しすぎない、という独自ルールが各々にできているのも面白い。ストーカー同士で仲間意識が生まれることすらある。

ストーカーたちの、好きなことをやって満足している姿は、ちょっとだけ青春のようにキラキラしている。

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たまごまご

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