2019.01.13

【日替わりレビュー:日曜日】『ロジカとラッカセイ』紀ノ目

『ロジカとラッカセイ』

とある惑星で暮らす、ロジカとラッカ。彼らは、暇つぶしに穴を掘って“謎の円盤”を手に入れたり、 森で“秘密のダンジョン”を見つけたり、毎日楽しく過ごしている。 その惑星には、まだまだふたりが知らないことが沢山あって……。(公式あらすじより抜粋)

今日はWebコミック「くらげバンチ」で連載中の、『ロジカとラッカセイ』をピックアップ。人間はラッカこと「ラッカセイ」のみ、ロジカをはじめとする種々様々な“人外”たちが珠玉の群像劇を繰り広げていく、SFファンタジー作品です。

冒頭1話、2話で見せるのは、あらすじ通りのかわいくコミカルで、ほのぼのとしたゆるめの日常系。なるほどこんな感じで進んでいくのかなと思いきや、3話目「マシューさんのアップルパイ」で一気にブレイクダウン、その後もぴりっとダークな物語が挟まれ、本作の正体に気づきます。

そして、第1巻の最後ではロジカとラッカの出会いやこの惑星の軌跡などもあらわになり、テンポ良くキャラ達の秘密や背景が明らかに。2巻でもその勢いは衰えることなく、ダークな部分はよりダークに、そしてより一層美しさと愛らしさを増した物語が展開されていきます。

基本的には前述した、惑星自体やメインキャラ達を土台したストーリーラインが1本軸として引かれていますが、その間には1話完結の短編が差し込まれる本作。

それぞれのお話では、あっけらかんとしたコメディ、不条理展開、人生哲学的な教訓譚、生き物としての業や愛・友情を描いたドラマ、など星新一先生のショートショートのように様々な表情を見せてくれるのです。

物語のテンション感の振れ幅が非常に大きいため、ともすれば散らばってしまいそうなものですが、その心配はご無用。

キャラクター設定やその造形がとても秀逸なため、1話1話の説得力が強く、借り物でないオリジナリティを強く感じさせます。また、毎話くらいのペースで新キャラがどんどん登場してくるのも読んでいて飽きないし、世界観にぐっと奥行きを与えています。

作者は、『のろまな流れ星』でくらげバンチの第7回「8P@GOGO!」大賞を受賞、comicoにて『釘無ぼんに風が吹く!』『エルマン』を連載していた、紀ノ目先生。

comicoの時はフルカラーの縦読みフォーマットで描かれていましたので本作とは少々雰囲気は異なるものの、こちらはこちらでめちゃくちゃおもしろい。また、『エルマン』と『ロジカとラッカセイ』を繋げるステキなエピソードも、本作では用意されているので、ぜひこの機会に先生の過去作もチェックして頂きたいところです。

ライトな読み味ながらも、魅力的なキャラ達やダークな演出などにより読後にはどっしりとした充足感を得られる本作。今年も引き続き注目頂きたい秀作です。

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この記事を書いた人

八木 光平

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