2019.01.16

【2018年12月】マンガ家が選ぶ 今月の注目!新連載マンガ

毎月100本以上の新連載が始動しているマンガ戦国時代とも言うべき昨今。その中でも、マンガ家たちが注目した作品をピックアップしていく本連載。

今回は、2018年11月18日~2018年12月15日の間に始まった新連載マンガから「マンガ技術研究会」(マンガ家による勉強会サロン)が着目した作品を紹介いたします。

『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』

大学空手チャンピオンが出会ったのは、最強の男、川端強(かわばた・つよし)だった!

という、この作品ですが、その何よりの強みはタイトルです。タイトルの時点でもはや読みたくなってしまう。タイトルの時点でほぼ勝っている。だって、タイトルを見ただけで、TSUYOSHIが気になってしまいませんか!?

「TSUYOSHIってどんなヤツなの? 見た目は? 性格は?」
「なんで誰も勝てないの? 武術が強いの? 超能力があるの?」
「何の格闘技をやってるの?」
「ていうか、そもそも人間なの? 熊の名前だったりしないの!??」

タイトルを見た瞬間にこんな疑問が湧き出てきます。そして、その疑問は5分かけて数十ページをめくるだけで解決する……いや、そりゃあ読みますよね。無料だし。今スグ読めるし。

タイトルの時点でこれほど「勝っている」作品は久しぶりに見た気がします。「どういった観点から作品タイトルを付けるべきか」という点で、本作はとても示唆するところの大きな作品でした。

『当て馬カノジョ』

設定がすんごい百合マンガです。

告白が実り、先輩(七海・♀)と付き合うことになった主人公(・♀)だが、実は七海先輩には昨日分かれたばかりの恋人(リョウ・♀)がいた! 七海はリョウとよりを戻したいばかりに、栞を当て馬に使い、リョウの嫉妬心を呼び覚ます計画だったのだ! 七海の本心を知り、衝撃を受ける栞……!

が! 栞は力強く再起し、当て馬という立場を利用して七海を籠絡しようとする。一方、リョウは目の前でイチャコラちゅっちゅする栞と七海を見て激しい絶望と嫉妬心を覚えるも、同時にNTR(寝取られ)に目覚めてしまい、激しく興奮! そうして、異様に前向きな栞と、変な趣味に目覚めてしまったリョウの狭間で、七海がただ一人困惑するという脅威の百合ラブコメなのです。

異様な設定てんこ盛りな上に、大前提として同性愛なことにもはや誰一人として突っ込んでいないという作風は、読んでいてめまいに似た感覚を覚えます。が、個人的にはこういう感覚、大好物なんです。あらすじを読んでピンと来てしまった同種の人たちはぜひ!

『妹りれき』

最近、高校生になった(高1)。妹がそっけなくなり、何を考えてるのか分からなくなってしまった(高3)。だが、ある日、兄は妹の検索履歴「だけ」を知る手段を手に入れます。その日から、妹の行動が少しだけ分かるようになっていき……

という、日常ミステリー系マンガです。妹の謎めいた検索履歴(「地球温暖化 オゾン層 がんばれ」「ダンダダダダン」など)から発生するミステリー(何だこの検索は?)を兄が推理し、妹の行動の端々を観察することで、謎を解いていく作品だと言えます。

私がこれまで様々な新連載作品の第一話を読んでいく中で、「二話目を読みたくなった作品」が幾つもあったのですが、その何割かに共通する要素として、「ヒロインが何を考えているのか分からない」というのがありました。そこから、「女子が今何を考えているのか」には人を(男子を?)惹き付ける強いミステリー性があるのではないか、という仮説が立てられています。

そして、本作はまさに「女子が今何を考えているのか」にフォーカスした作品です。 「妹の考えていること」というミステリーは、実際に読者の興味を惹き付けることに成功しているのではないでしょうか?

『チェンソーマン』

ジャンプらしからぬダークでハードなオカルトバトルマンガです。

チェンソー型の悪魔、ポチタと共にデビルハンターとして活動する借金まみれの主人公デンジは、雇い主のヤクザに裏切られ、悪魔の手により惨殺されます。ですが、ポチタはデンジと同化することを選びます。それによりデンジは命を救われ、悪魔を返り討ちにし、公安のデビルハンターとしてスカウトされるのです。

……といったストーリーだけでも一般的な少年マンガとはやや毛色が異なる感じですが、実際に読んでみると、借金苦に苦しんで内蔵などを売り払うどん詰まりな雰囲気のダークさや、チェンソー攻撃で血飛沫が飛び散るハードなアクション描写など、ジャンプのイメージを覆しに来た怪作であることが分かると思います。これは小さな子供が読んだら泣いちゃうんじゃないかな!

といっても、ジャンプは以前にも、デスノートのような青年誌ノリの作品が掲載されたりと、読者の幅を広げようとするかのような挑戦的な掲載がしばしば為されています。今回の『チェンソーマン』は、ジャンプの幅を感じさせるという点でも興味深い新連載ではないでしょうか。



以上、100作品以上の中からピックアップした4作を紹介いたしました。他にも特筆すべき作品は幾つもありましたので、新連載作品に興味を持たれた方は、こちらから色々な作品を読んでみてくださいね。

この記事を書いた人

架神 恭介(@マンガ新連載研究会)

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