2019.01.20

【日替わりレビュー:日曜日】『異邦のオズワルド』おかざきさと乃

『異邦のオズワルド』

本日は、1月19日に単行本1巻が発売されたばかりの『異邦のオズワルド』をピックアップ。「月刊コミックゼノン」などのコアミックスが立ち上げた、Webマンガサイト「コミックタタン」連載中の、SFファンタジー作品です。

地球外知的生命体との遭遇を夢見る主人公・間宮武蔵は、その夢は大きいながらに研究経験がない素人なため、今までどの研究者からも相手にされず門前払いを喰らってきました。

そんな中、プエルトリコの小さな島を拠点とする天文学界の天才異端児・伊崎アイラのもとにたどり着き、彼は助手兼家政夫として、半ば強引に探査研究の手伝いをさせてほしいと懇願します。

しかし地球外知的生命探査といっても、実際のところは宇宙からの膨大な電波データのモニタリングと解析であり、アイラはそれに飽き飽きしていて興味の範囲外だ、と彼に伝えるのです。彼女はそんなことよりも、この世の常識にあてはめることのできないような超常的事象について科学的に討究することにしか興味がありませんでした。

それでも地球外知的生命体の研究に関わりたい武蔵は食い下がり、なんとか研究所に居座ることに成功。お宝な研究資料に興奮しますが、そのノリでついアイラに入室を禁じられていた部屋も早速開けてしまいます。するとそこには彼女が「眠り姫」と呼ぶ、10年も眠り続けているという美しい1人の女性が。眠り姫は生態研究用サンプルとして、アイラが引き取っていたのでした。

武蔵は、自分がなんとなく拾っていたキラリと輝く「石」をネックレスにして、似合うからという何気ない理由で眠り姫の胸元に着けて床に就くのですが、その夜突如眠り姫は姿を消してしまい──というのが冒頭のあらすじ。

この後も、見つかった「眠り姫」が超常的な事件を引き起こしていったり、アイラが島内の住民からは「魔女」として恐れられている謎があらわになったりと、どんどん物語が加速していきます。

本作の立て付けとして、唯我独尊で変人のアイラに振り回されるまともな武蔵といった形で進むのかなと、はじめ一瞬思いましたが、この武蔵自体もアイラが「良い感じに狂ってる」と褒める程になる、かなりの奇人。地球外知的生命体や宇宙LOVEすぎて、様々な危険な目にあっても、バカみたいに首を突っ込んでいきます。

違ったベクトルでおかしな2人に共通する、異常なまでの知的好奇心。この彼らのはちゃめちゃな原動力におされて、お話もテンポ良く進んでいくので飽きさせません。

それから、本作の大きな魅力の一つとして挙げられるのが、その画力の高さです。背景の描き込みや一枚画の緻密さ、いきいきとした人物表現──。シリアスなシーンでは説得力のある美麗なカットがばしっと差し込まれ、反対にコメディタッチな部分は抜けててとってもユーモラスに展開され、表現の振れ幅の安定感がすごく、ページをめくるごとに作品に引き込まれていきます。

初巻とは思えない程に既に完成されている本作なのですが、作者・おかざきさと乃先生はなんとこの『異邦のオズワルド』が連載2作目というのが驚きです。(前作の『金平糖の花嫁』もデビュー作とは思えない秀作なので併せてチェックして頂きたいところ。)

まだ現状では謎が謎を呼ぶ、あくまで序盤にすぎない1巻であり、今後の展開が非常に気になる本作。これからの盛り上がりにも期待できますので、ぜひこのタイミングで手に取ってみて下さいね。

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この記事を書いた人

八木 光平

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