2019.01.24
【日替わりレビュー:木曜日】『あせとせっけん』山田金鉄
『あせとせっけん』
においで結ばれるって最強
私は、歩いたり食事をするとすぐに汗をかく。すぐに体が火照るとわかっているので、いつも薄着だ。この季節はけっこうな頻度で「寒くないの?」と聞かれる。正直、ちょっと寒い。ただ着込んだら着込んだで、汗のむわっとした臭いがまとわりついてしまって、そっちの方が嫌なのだ。
程度の差こそあれ、自分の体臭が気になる人が多いだろう。特にそれが好きな相手だったらなおさらだ。
『あせとせっけん』の主人公、八重島麻子は汗っかきがコンプレックスのOLだ。毎朝出勤するとまずトイレに行き、汗拭きシートとスプレーでケアをするのが日課。汗をかかないよう極力動かず目立たず過ごすなど、汗対策に支配されてしまっている日々。
そんな彼女のもとに現れたのが、同じ会社に勤める名取香太郎。彼は超絶嗅覚の持ち主で、ある日彼女の体臭にビビッときて「もっとじっくり嗅ぎたいので少々お時間頂けますか?」と迫ってくる。
変態である。それだけ聞いたら誰だってゾッとする。さらに八重島にとって体臭はコンプレックスだ。彼女は全力で逃げた。しかし、逃げきれなかった。
超絶嗅覚をもつ名取は、八重島の体臭からなんの種類の汗拭きシートやデオドラントスプレーを使っているか見事に言い当てる。そして、何より彼女の臭いを「むしろめちゃくちゃいいにおいです」と言ってくる。
汗っかきで「汗子」というあだ名をつけられたこともある彼女にとって、予想外の存在が現れたのだ。自分が臭いとおもって気にしていた体臭を「いいにおい」と言ってくれる人がいる。
終始ほんわかとした雰囲気の中で描かれるオフィスラブは、ときめきと萌えがたっぷり詰まっている。そして、なんといっても、男前で一途で八重島さんが大好きな名取がとにかく可愛い。こんな男に「におい」で好きになってもらったら最強だよなあ。
©山田金鉄/講談社