2019.01.30
【日替わりレビュー:水曜日】『今日から俺はロリのヒモ!』暁雪, へんりいだ
『今日から俺はロリのヒモ!』
何も苦労せず、幼女に養われるヒモ生活をはじめよう
原作小説が発売された時に物議を醸した、お金持ち幼女に養ってもらうヒモ高校中退男子を描いた作品が、ついにコミカライズ。マンガは、小説版の挿絵を担当し、普段からロリマンガの傑作を描き続けているへんりいだ先生。
マンガ家志望の17歳・天堂ハル。鳴かず飛ばずな彼の作品をネットで見ていた二条藤花(にじょう・とうか)は彼の大ファン。何億も稼いでいる小学五年生の彼女は、ハルにマンガを描いてもらう体制を整えるため彼を自宅に招き、ヒモとして生活させ始める。
他にもちょっと中二病な(小学生だけど)小森紗奈(こもり・さな)、つんつんしているけどころっとデレる丹沢千鶴(たんざわ・ちづる)など、小学五年生ハーレムが形成されていく作品だ。
ハーレムものといえばある程度のご都合展開が面白さの一つ。しかし「ロリヒモ」に至っては、ご都合しかない。なんせハルはヒモであること以外なにもしない。けれども登場する少女たちは全員何億も稼ぐ投資家で、よくわからないけれども彼のいいところを褒め、マンガを描かない状態でも甘やかしまくる。
へんりいだの描く少女たちのかわいらしさ、子供体型の艶めかしさが尋常じゃないあので素直に「ロリ萌え作品」としても取ることができる。だがここまでお膳立てされまくると、読んでいて恐怖感すらわいてくる。この眼の前にいる子たちは何者なんだ、本当に存在しているのか……?
極端によった萌えは、ホラーだ。主人公が頑張った末のご褒美として幸せがあるわけではないので、見ていてとても不安になる。原作ではさすがに警察に目をつけられたり、「ヒモの矜持」としてハルが一念発起するシーンもあったが、コミック版ではどうなるんだろう? 現時点では少女たちの人間性はあまり強くなく、ハルが「少女」の記号の中で転げ回っている状態だ。
原作の内容をコミカライズにあたってギュッと凝縮。これによってお付きのメイドである園原麻耶(そのはら・まや)による怒りの鉄槌の回数が必然的に多く見えるため、ハルの行動が正しいものとして肯定されていない空気感が保たれているのはポイントの一つ。
5話のタイトルが「ろりともだち(健全)」と、かつて多くのエロマンガファンを震撼させたクジラックス先生の作品のパロディなのは、笑っていいのかどうかとても戸惑う。
ストレートに萌えを受け止められる人には最高のロリ生活作品として楽しめる作品だろう。
一方で「萌え」に対して引け目や後ろめたさ、代償の必要性を感じたことのある人には、いつ瓦解するかわからない幻想的すぎる世界に、怯え上がるかもしれない。この幸せの分、地獄でどんな目にあうんだろう。
©暁雪,へんりいだ/秋田書店