2019.02.05

【日替わりレビュー:火曜日】『妖怪番長』柴田ヨクサル

『妖怪番長』

成功する人のパターンには二種類あります。ナンバーワンオンリーワン。一つのジャンルで一番になるナンバーワンは、イチロー選手なんかが有名ですね。

オンリーワンは、替えの利かない存在です。ビジネス書や自己啓発書によく書かれている「1万時間の法則」と言われるルール。100時間x100時間x100時間分の努力をして、複数の得意分野を持つことで、希少価値のある存在になれるとのこと。ちなみに筆者は「マンガ系ライター x 製麺業」に従事していて、まったくシナジー効果を生んでいないのですが……。

さておき、昔からオンリーワンだと感じているマンガ家が柴田ヨクサル先生です。一目で「絶対にこの人だ」と分かる個性の強い絵柄。格闘マンガ『エアマスター』は衝撃でした。

次回作『ハチワンダイバー』はまったく方向性を替えた将棋マンガ……殴ったり蹴ったりの『エアマスター』的要素も多分にありましたが(これホントに将棋?)、またもや長期連載の大ヒット。

そして『妖怪番長』は、妖怪退治をする女児たちのファンタジーアクション! 本当に作風が広大というか、予想のつかない引き出しが多いです。

特殊能力を持った女子児童の3人は、それぞれが異能の力を持っています。妖怪の夢の中に潜り込んで相手を屈服させる墓場巫子(はかば みこ)。倒した妖怪を出現させて使役させる墓石鎖子(ぼせき さこ)と古井戸呱子(ふるいど ここ)。つまりポケモン的な感じです。

この3人+引率の先生で、カッパ、カラス天狗、カニといった和風の妖怪たちと異能力バトルを繰り広げます。布袋尊の顔をした巨大カニの顔面に蹴りを加える巫子。カッパがカラス天狗に食らわした一撃。ページをめくった瞬間、空間が把握できる遠近法の構図で、ド迫力の絵面が視界を覆ってくるのが柴田ヨクサル風味。

このマンガはとにかく横に吹っ飛ぶ。電子書籍派の皆さんには、大型タブレットの両開き設定を推奨します。

日常会話も意外性の塊で、読み手が刺激を受ける組み立てになっています。セリフが短めで、各々が好き勝手に喋りまくるズレた会話劇が面白おかしくてたまりません。単語のチョイスとともに、セリフを細かく区切ることでキレのいいテンポ感を出しているんです。他のマンガには見当たらない、これまた柴田ヨクサルのオンリーワンの技ではないでしょうか。

そもそも登場人物たちが意外性だらけです。園長先生は見た目12歳の女子小学生ですし、白衣でメガネ、理系の木場ヤスオ先生は近接戦闘で人類最強レベルだったり。いい意味で奔放さがハジケている、規格外の面白さに満ちているんです。

この記事を書いた人

かーずSP

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