2018.02.12

【日替わりレビュー:月曜日】『社畜が恋をしてみたら』今井ささる

『社畜が恋をしてみたら』

社畜が恋をしてみたら

ライトにカミングアウトし、ライトに付き合い始め、ライトにベッドまで!

帯のアオリが「BL漫画史上、受の労働時間第1位!!」となっており、「受」「労働時間」「第1位」が脳内でBL的妄想合成をおこなった結果、他の表紙の要素をすべてすっ飛ばして、「そうか、ベッドで過ごす時間が大半のBLなのね……丈夫な腰なのね」と理解しつつ読み始めた作品でした。そもそもタイトルに社畜とあるのだから察しろよ、という感じですよね。まったくです。邪推してしまって申し訳ありません。

今井ささる先生のデビューコミックの受・服部は、正真正銘のリアル社畜でした……。夜・ベッドでの攻のお相手ではなくて、昼の会社の労働ですね。BL業界にも働き方改革の実装が待たれます。とにかく激務なので、偶然居酒屋で知り合って酔った勢いでカミングアウトした相手・伊賀とさらっと付き合うことになっても、なかなか時間がとれません。ようやく最後まで致せても、とにかくさまざまな場面で物理的にすれ違います。

忙しさのあまり会う回数は多くなく、時間的にもそれほど長く付き合っていないというのに、突然、実家まで連れて行かれるなど、マイペースかつどことなく強引な伊賀に振り回される服部。それなのに本気で怒れないし、どんどん伊賀に惹かれていきます。それにしてもまさか攻の実家で関係がバレる展開までサラッとライトだったのには目ん玉飛び出るかと思いましたね。

服部が伊賀を好きになっていったように、伊賀も服部にどんどんはまっていっておりました。しかしお互いの仕事が忙しすぎてすれ違いが続いたりと、リーマンラブにありそうな要素はまとめてパッケージしておきました! といわんばかりの作者のサービス精神には感服です。恋愛要素の他も、妙にリアルな社畜描写にも涙が止まりません……。萌えの世界にまでこんな激務が持ち込まれるとは、何という時代でしょうか。

全体的にとにかく読みやすく、流れるようにお話が進みます。重い話もあったはずなのですが、重さを感じさせないのはこの作者の持ち味なのかキャラの性格上なのか。
描き飛ばした風もなく1冊にしっかり、馴れ初めから両想いに至るまでを収めた実力は本物だと思います。次の作品も楽しみとしか言いようがありません!

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この記事を書いた人

アキミ

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