2019.02.24
【開発インタビュー】「マワシヨミジャンプ」あの頃の回し読みの楽しみを今。最新テクノロジーでアナログなマンガ体験!
マンガアプリが色々な媒体からローンチされ、電車などの移動中にマンガを楽しむ老若男女の姿を見かけることも多くなりました。スマホに合わせた縦スクロールのスタイルのマンガも増えつつあり、いま、アプリは読者のマンガ体験をさらに拡張しています。
とはいえ、どのアプリもマンガを選ぶのは曜日ごとに配信される作品のサムネイルから選ぶことがほとんど……だったのですが、全く違うアプローチでマンガと出会うアプリが爆誕していました。
その名も、「マワシヨミジャンプ」。小さい頃、学校で回し読みをしていたように、近所でマンガを拾って、読んで、次に回せるというアプリです。
実はこのアプリ、少年ジャンプが主催する「少年ジャンプアプリコンテスト」第一回の入賞企画でした。
どのような思いでこのアプリが生まれたのか、「少年ジャンプ」編集部主任(少年ジャンプ+担当)の籾山悠太さんと、ミライアプリ株式会社代表取締役の渡嘉敷守さんにお話を聞きました。
(取材・文:八木あゆみ/編集:八木光平)
マンガとの新しい出会いを生み出す、少年ジャンプの挑戦
──まずは「マワシヨミジャンプ」がどんなアプリなのかを教えてください。
渡嘉敷守さん(以下、渡嘉敷):地図を使った新しいコンテンツの共有方法を提供しています。位置情報をつかって、自分の周辺にあるコンテンツを一冊のみ、獲って読むことができる。これを「マワシヨミ」と呼んでいるんですが、別のものを読みたかったら、今持っているマンガと交換するわけです。
また、それぞれの本には「マワシヨミ帳」という感想をコメントする機能があり、本の貸し借りや感想を伝え合うコミュニケーションも実現するアプリですね。
──あれ、この地域(インタビュー場所である集英社の本社周辺)は『バクマン。』だらけですね。
籾山悠太さん(以下、籾山):おっ、気づかれましたか? 実は地域によって特定の作品が多く出ることもあり、神保町には新人作家さんもたくさんいらっしゃるということで『バクマン。』がたくさんでる、という裏設定もあるんです。
──本アプリは「少年ジャンプ アプリ開発コンテスト」の第一期入賞作ですが、主催者側としてこのコンテストをはじめた想いをお聞かせください。
籾山:ジャンプが50周年となる2018年のタイミングで開催したんですが、新しい技術などを使って読者と作家さんがより幸せになれる新しい企画やチャレンジをしていきたかったんです。
そのためには自分たちの力だけでは難しいところもあるので、新しい目線での企画を募集するためにコンテストを開催しました。
──見事受賞したミライアプリさんですが、コンテストのどこに魅力を感じて応募したんですか?
渡嘉敷:実は最近あまりこのようなアプリコンテスト自体が少なく、久しぶりに大規模なコンテストの実施ということで、まず面白そうだなと思いました。
最初に位置情報は使いたいと思っていて、それに加えて「見知らぬ人達と本を回し読みしていく体験」とを組み合わせるのが、アプリだとできそうだと考えつきました。
ただ実はこの企画、締め切りギリギリに資料を仕上げましたので……。我々ミライアプリは3人しかいない小さい会社ということもあり、ほかのメンバーは応募したことすら知りませんでした。書類審査を通ってから、「実は応募していて、次はプレゼンがある」と彼らに伝えたんです。
──ジャンプとして、この企画を選んだ理由はどういうところに惹かれたからだったのでしょうか。
籾山:どのマンガアプリにも似ていない点です。位置情報を使ってマンガを楽しんでもらうという点に新しさを感じました。全く新しいアプローチで作品との出会いを生み出すというところが、僕らとしても是非実施してみたいポイントでした。
テクノロジーを駆使して、アナログ感を演出する
──アプリ開発にあたって、制作の流れとおおよそのタイムスケジュールはどういったものだったのでしょうか?
渡嘉敷:1年弱ほど、毎月打ち合わせをしてアプリの機能を作って、見てもらって、修正してというサイクルをずっと続けてきました。アジャイル開発(※固定チームで、短い時間で小さな機能を作る、を繰り返す開発手法のこと)で作りながらブラッシュアップしていき、デザインも途中からUIデザインに強い株式会社スキーマさんにも協力いただいて、雰囲気のあるテイストに仕上げました。アプリはiOS と Android とそれぞれ担当を持ち、システムも含め3名で開発を進めました。
考えるだけだとわからないので、作って使ってみるという部分は重点的にやりました。早い段階でプロトタイプをあげて、UIデザインや機能の検討をしていきました。
──風変わったUIデザインですが、こだわったポイントを教えてください。
渡嘉敷:最初から合意していたのは、アナログ感を大事にしようということです。位置情報などが絡むと、青色のネオン管などサイバーチックなトーンのデザインになりがちなんですが、せっかくマンガなので、アナログ感を大事にしたいと話していましたね。
あと個人的な思いとして、a-haの「Take On Me」というミュージックビデオで女性がマンガの中に入って出て行くんですけど……そのイメージがなんだか心に残っていて。アナログとリアルの共存といいますか。
そこから着想も得た、六角形を手書きで書くようなアニメーションはこだわりですね。ラフなスケッチみたいな感じから、リアルにつながる部分です。手書きのいい味わいが出ていて、色もあまり使わずに白と黒ですごくまとまりましたね。
──今後の機能のアップデート予定などあれば聞かせてください。また、サービスとして今後どのような発展をしていくことを望んでいますか?
籾山:ユーザーの反応を伺いながらなので、まだまだこれからですね。でも実装するかはわからないですけど、読めば読むほど表紙がボロボロになっていくとか、古本に残ったメモや線みたいな、持ち主のストーリーやアナログ的な風情を感じる仕掛けができたらいいねなんて話しています。
デジタルの力で、マンガの楽しみ方はもっと広がるはず
──「マワシヨミジャンプ」によって、ユーザー同士でどんなコミュニケーションが生まれることを期待していますか?
籾山:感想をつけられる機能である「マワシヨミ帳」なんですが、同じタイトルであっても自分が拾った本そのものにしか感想をつけられないんです。受け取った人もそのレアさというか、運命的なものを感じてもらえたらと思います。アナログ的な、ひとり対ひとりのコミュニケーションが生まれることを期待したいです。
渡嘉敷:実は内心、みんなコメントしてくれるのかな? なんて思っていたんですけど(笑)、実際に投稿された感想からはマンガに対してのピュアな反応が見てとれて、すごく嬉しいですね。
読者みんなの込められた思いが一冊のなかに蓄積されていくのは、見ていて面白いと思います。自分がコメントしたマンガのその後の旅路が見れるのも面白いと思います。自分が昔読んだ同じ本を、もう一回探すなんて楽しみ方もいいかもしれませんね。
──コンテスト自体の今後の展開について教えてください。また、どのような企画が届くことを期待しますか?
籾山:第2期「少年ジャンプ アプリ開発コンテスト」の入賞企画3つはすでに開発の調整中です。お楽しみに!
また今年は、第3期の募集も予定しています。いろんな企画が届くことが楽しみなので、あまり絞りたくないですが、個人的に興味があるのがふたつ。
ひとつは「マンガを連載しながら読者の反応・意見をマンガにとりこんでいく」こと。ジャンプのアンケートがまさしくそうですが、いい意味で読者の反応を受けながら面白くしていくのをデジタルの技術でアプローチができると、紙の雑誌とはまた違う面白さがあるのではと考えています。
もうひとつは、ジャンプは才能を持った新しい作家さんの発掘にどこよりも力を入れている編集部なので、「新たな才能とこれまでとはまた違う形でつながるようなアイディア」など、見てみたいですね。とはいえ、これに縛られず自由な発想の企画をお待ちしています!
──マンガと密接に関わるお二人が、過去に影響を受けたマンガやマンガ家、最近ハマっている作品を教えてください。
籾山:一番好きなのは『DRAGONBALL』なんですけど……桜玉吉先生のマンガのリアルな感じと、少しダウナーなところが好きですね。DRAGONBALLと真逆かもしれませんが(笑)、マンガに限らず小説なども、リアルなものやノンフィクションものが好きなんです。桜先生は、新刊も発売されたばかりなのでぜひ。
最近ハマっている、というと自分が担当している作品ですが、『顔がこの世に向いてない。』はコンプレックスをテーマにした4コマ連載なのですが、毎回セリフの切れが抜群で面白いです!
≪ジャンプ+金曜日更新ピックアップ!!≫
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マイナス思考が紡ぐネガティブラブコメ解禁ッ!▼ネガティブ少女が送るラインは…https://t.co/qhim41V4TT
次回1/4(金)更新予定! pic.twitter.com/TFEcm9fQwc— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) 2018年12月28日
渡嘉敷:『ジョジョの奇妙な冒険』はずっと読んでいますし、これからも読むんだろうなって思います(笑)。
そんなジョジョからは、人生的にもいろんな影響を受けているとは思うんですけど、作品としてトリッキーな感じや、独創性がすごくて。映画っぽいといいますか、重厚感が大好きです。今放送中のTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』も、いつも楽しみにしています。
──キャンペーンやアップデートの情報などはありますか?
籾山:本アプリ内でマワシヨミされた回数が100万回を突破したことを記念して、2月24日(日)よりラインナップに「ウルトラジャンプ」本誌のバックナンバーを追加しました。まずは先月発売した前号の2月号を約7日間の期間限定で配布し、今後も毎号バックナンバーを配信していきます。
──最後に、マワシヨミジャンプを利用しているユーザーや、この記事を読んでいる読者へのメッセージをお願いします!
渡嘉敷:利用の状況を見ていても、通勤の朝の時間やランチタイムなどに動きが見えるので、日常的なツールに定着しつつあるのかなと思えるのが嬉しいです。あとは帰省や出張など、ちょっと違う場所にいった時にマワシヨミ帳を残してみるなど、どんどんユニークな使い方を試してみてくださいね。
籾山:ぜひ、マワシヨミジャンプで新しいマンガに出会ってください。これまでなかった試みをデジタルに限らずたくさんチャレンジして行く予定なので、読者の方も作家さんも、これまで以上に「少年ジャンプ」に期待してもらえると嬉しいです。
──本日はありがとうございました!
サービス情報
『マワシヨミジャンプ』
■「マワシヨミジャンプ」とは
2019年1月10日より配信開始したマンガアプリで、位置検出情報を利用した、”本”を回し読みできるサービス。
ユーザーは、現実のMAPと連動したアプリ内のMAP上で近くに表示された電子書籍を”拾って”読むことができ、それをまたアプリ内の地図の好きな場所に置いて、他の読者に読ませることができる。“拾った“本にはそれぞれ「マワシヨミ帳」という機能が付いており、読者は「マワシヨミ帳」にコメントを記帳することができるほか、次に手に獲るユーザーと感想などを共有することができる。
本アプリは、「週刊少年ジャンプ」の創刊50周年を記念して開催された「ジャンプアプリ開発コンテスト」の第1期入賞企画で、受賞したミライアプリ株式会社と週刊少年ジャンプ編集部が、共同で企画・制作した。
■MAP上に配布している本のラインナップ(一部)
*漫画雑誌:「週刊少年ジャンプ」「ジャンプSQ.」
(※それぞれ、期間限定でバックナンバーを配布)
*コミックス:『ONE PIECE』 『DRAGON BALL』 『僕のヒーローアカデミア』 『ハイキュー‼』 『青の祓魔師』『地獄楽』『約束のネバーランド』 『キャプテン翼』 『ジョジョの奇妙な冒険』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 『HUNTER×HUNTER』 など
(※各作品、MAP上で配布していのは一部の巻数のみ。)
■推奨OS
・iOS9.0以上[iPhone6s以降のiPhone]
・Android 6.0以上
※一部端末・環境では、ご利用いただけない場合があります。