2018.02.16
【日替わりレビュー:金曜日】『キナリの星屑』夏目コウ
『キナリの星屑』
デザイン高専で繰り広げられる恋模様
今、美術・工作系のマンガが熱いです(私の中で)。
インテリ不良が美大への道を志す『ブルーピリオド』(山口つばさ/講談社)、美術予備校を舞台にラブストーリーが繰り広げられる『セキララにキス』(芥文絵/講談社)、大学の美術制作サークルを舞台にした『ウラカタ!!』(葉鳥ビスコ/白泉社)。それぞれ物語のベクトルは違えど、どれも面白いんですよ。美術予備校や作品制作の裏舞台なんていう、普段生活していて知ることのない部分を知れる面白さがまずあるわけで。
また美術ってスポ根ものに通ずるものがあるのですが、スポーツと違って美術は男女が同じ土俵の上で戦うことが出来るので、切磋琢磨し合ったり、互いに尊敬しあったりという感情面での補強がしやすい。また部活・予備校・サークルという違いはあれど、いずれも学校というフォーマットの上で繰り広げられるので、青春模様も描きやすい。うん、良いとこだらけですね。
……で、そんな中登場したのが、『キナリの星屑』(夏目コウ/白泉社)です。
グラフィックデザイナーを志して、デザインに特化した高等専門学校に入学したキナリ。どんな課題にも全力で取り組む彼女の姿を見て、学年一の才能を持つと言われるイケメン・一之瀬が興味を持ってきて……というデザイン&ラブな物語。
田舎っぽくて不器用なキナリと、一見チャラそうな一之瀬。性格だけ見れば水と油。出会い方の悪さもあり、最初はぶつかり合う二人でしたが、互いにデザインにかける想いは人一倍。課題への取り組みや生み出されるアイデアを目の当たりにし、そのデザインへの熱量とセンスを認め合い、一気に距離を縮めていきます。
好きなことに打ち込む姿、はじめて恋を知り戸惑う姿、吹っ切れて一気に気持ちが浮上する姿……そのどれも青春の匂いに溢れており、実に瑞々しい気持ちにさせられます。また少女マンガ的なラブロマンスの要素も、デザインに充てる描写が多くなるからと言って半減しているようなことはありません。むしろラストは気恥ずかしくなるぐらいに強引でロマンチックな展開になるのですが、そこは読んでのお楽しみ。
ちなみに物語の舞台になる札幌市立高等専門学校、かなり具体的な名前で登場するのですが、実はここ、本当に存在した学校なんです(2011年に大学化に伴い閉校)。作者の夏目コウ先生はここの出身で、母校を舞台にこの物語を描いたとのこと。なので授業の内容や、学校の設備、空気感など、描写がかなり細やかでリアル。そのあたりも注目して楽しんでもらいたい一冊です。