2019.02.20

【日替わりレビュー:水曜日】『輝夜月ガチ勢の日常』おのでらさん, 輝夜月

『輝夜月ガチ勢の日常』

酒とつまみと輝夜月のいる生活、生きてるー!

先に一言。このマンガは輝夜月のマンガではない

VTuber(バーチャルYoutuber・キャラクター性のあるアバターを介して動画撮影・配信を行う表現者のこと)輝夜月。強烈なキャラクターで話題沸騰中な彼女に、ガチハマりした人たちを描いた、オムニバス群像劇だ。

くたびれきった会社員の木下。心が死んでいたある日、輝夜月の動画を発見。その声のインパクトと、元気なかわいさにノックアウト。ストレスで疲れて切った仕事中も、輝夜月の声が頭に響いて元気になる。もう仕事なんて無理だと涙しながらも、家でお酒を飲みながら輝夜月を見れば、心はすぐに蘇る

「酒とつまみと良い動画(かぐやるな)! これ以上の悦びがあるだろうか! 楽しい!! もう楽しい!! 生きてる~! 今!!」

適量の輝夜月摂取で、健康になってきた彼。輝夜月の動画を見るため、定時であがるよう仕事を頑張る。心はポジティブな方向に動き始めた。

「推し」が人にどのような影響を与えるのかを描いた作品だ。ただし輝夜月がVTuberであるため、一般的なアイドルや歌手の「推し」と性質が大きく異なっているのが特徴。

ある女子高校生は、輝夜月のかわいらしさに惚れ込んで、イラストを描きたい、と思うようになる。なかなか描けず苦心する彼女。ある日SNSにアップした二次創作が、輝夜月本人によってシェアされた。二次創作文化を本人が公的に吸収できる独自の距離の近さは、VTuberならでは。本人が見て反応し、向こうからネットを通じて接してくれる、なんて経験そうそうない。

輝夜月に憧れた男子大学生が、実際にVTuberになる様子もかなりリアル。通称「バ美肉(バーチャル美少女受肉おじさん・男性であることを明かしながら、女性アバターを使用してVTuberになること)」と呼ばれるものだ。

他にも輝夜月のライブを見て心が刺激され作曲を始めた青年や、カウンセリング相手と輝夜月の話題で盛り上がることが楽しくなった初老の男性など、老若男女様々な月fam(るなふぁむ・輝夜月ファンの呼称)が出てくる。輝夜月好きの間には、身分の差は一切ない

登場人物はみなバラバラに生きている。次第に「パルプ・フィクション」的に話がすれ違い、最終的に輝夜月仲間としてつながっていく様子は、壮大さすらある。

中には好きが度を越して滑稽になってしまう人物もいる。だがそこで生まれたエネルギーは、自分の行動を恥じて止めるなんてできず、前向きな思考と自己表現を奮い立たせる。これが、「推し」の力だ。

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たまごまご

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