2019.03.03

【マンガレビュー】『エーゲ海を渡る花たち』日之下あかめ【ダブルヒロインが繰り広げる中世冒険ロマン!】

『エーゲ海を渡る花たち』

本日は、「COMICメテオ」にて連載中の『エーゲ海を渡る花たち』をピックアップ。作者の日之下あかめ先生にとっては初の単行本である第1巻が、先月発売されたばかりです。

15世紀半ばのイタリア半島北部、エステ辺境伯 フェラーラ侯爵領に居をかまえる商家ロセッティ家のご令嬢、リーザ・ロセッティは、好奇心旺盛で「跳ねる嬢」(インペンナータ)という通称があるくらいのおてんば娘。しかし、どうしてもお家柄的にお淑やかであることを周囲から望まれ、日々窮屈な思いをしていました。

そんなところに、ある日一人の美しい女性と出会います。彼女の名前はオリハ。クルム(現クリミア半島)からやってきたオリハは、妹を探すためにクレタ島を目指して旅をしているのでした。

小さい頃から商人になって他の世界へ行くことを夢見ていたリーザは、これは絶好のタイミングだと、オリハに一緒に旅をしようと持ちかけます。当主代行である姉のマリアの反対もありつつも、家業の取引相手家の息子でもある商人・ロレンツォの提案に助けられる形で、まずはヴェネチアに向かうことになった一向。果たして、リーザは無事旅に出られるのか──、といった流れで序盤が進行されていきます。

魅力的でタイプの異なるダブルヒロインが旅を通して成長していく様を描いたヒューマンドラマでありつつ、当時の風俗や歴史をつぶさに伝えていく本作。緻密に描きこまれた背景や建物、食事、小物からは、時代考証がしっかりとなされた知性が醸しだされ、当時の息づかいも感じます。

また途中で挟まれる豆知識や、幕間に入るコラムなども、物語の奥行きを更に深める助けとなり素晴らしい。私個人的には世界史、というものには元々明るくはないのですが、こういった形で冒険譚に落とし込まれていると、ワクワクと楽しむことができますね。

あとがきで書かれていた通り、当日の史実的にも平和なタイミングということも踏まえて「優しい世界」で展開されていくとのことですが、穏やかな空気感に満ちながらも今後の彼女たちはどのような出会いや発見と共に歩んでいくのか。続刊にも期待が高まる作品です。

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この記事を書いた人

八木 光平

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