2019.04.09
青春の一コマを切り取ったきらめきと、躍動感溢れる描写が魅力の高校女子柔道漫画!『もういっぽん!』村岡ユウ【おすすめ漫画】
『もういっぽん!』
去年の夏クールのアニメ『はねバド!』と『はるかなレシーブ』で、「女の子がスポーツする姿って可愛いなー」と、改めて世界の真理に到達したアラフォーおっさんです。筆者の世代としては、青春の女子スポーツマンガといえば女子柔道の『YAWARA!』。皆口裕子さんの演じる猪熊柔がドンピシャのアニメ放映や、谷亮子選手の活躍もあって、一大ムーブメントでした。
そして今、新たな女子柔道マンガの傑作が生まれています。「週刊少年チャンピオン」連載の『もういっぽん!』。日本柔道やオリンピックの頂点を目指す!みたいな大掛かりなドラマではなく、等身大の高校部活としての女子柔道を、丁寧に描写しているんです。
中学最後の大会で柔道をやめるつもりだった、園田未知と親友の滝川早苗。
同じ高校に進学して、最後の対戦相手だった氷浦永遠と再会します。永遠から柔道部に誘われた未知は難色を示すものの、成り行きでもつれ合って、そのまま永遠に体落としを決めてしまう。道場に響き渡る、みんなの「一本!」の声。
流れるような体捌きを、カメラの連続撮影のようなカット演出。見開きページで、技が決まった刹那の瞬間を切り取るかのような光景が、思いがけず泣けてくるほどに美しい。
圧倒的な画力で、毎話必ず、大きなコマで「キメ」のシーンを表現してくるのが心を動かされるんです。
キメシーンは、柔道の躍動的な描写だけではありません。まだ単行本になっていない部分ですが、初の公式戦後、帰りの電車内。夕暮れの日差しが窓から差し込む中、疲れ切って眠る未知たちの姿。部活という青春の一コマを切り取っている、ノスタルジーに溢れた景色に涙が止まりません。未知たちにとっては当たり前の日常が、社会人から見ると、もう手の届かない宝物で、少女たちはそれに気づかないまま過ごしているんだなあと、切なく心を揺さぶられます。
ヒロインたちも魅力的です。永遠のポニーテールも可愛いし、顧問の先生も超美人でパンツスーツ姿がカッコいい。
というルックスの話はさておいて、内気な永遠を、元気少女の未知が吹き飛ばす関係性がすごく好き。
声が小さくて購買部のパンが買えない永遠を後押ししたり、中学時代に疎遠になった友人との気まずさを吹き飛ばしたり。「空気は読めないけど、空気を変える」未知の前向きなパワーがカッコいい。
「友達と部活やるのは楽しい」という青春の1ページを丁寧に描いていて、続きが楽しみな『もういっぽん!』。で、剣道部の南雲は結局のところ柔道やるの!? それとも剣道のままなの!? 3人+1人のこれからが楽しみです。