2019.04.12
巨乳好き主人公が「BLの世界」でBLフラグを回避し続けるコメディ作品!『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』紺吉【おすすめ漫画】
『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』
BL、読んでますか?
私はたまーに読むライト層って感じです。で、最近読んだのがこれ『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』。いや、まあ正確に言うとBLなんですけど、BLじゃないっていう。
主人公は、自分が漫画の世界の住人だと気づいている、メタい視点の持ち主。しかもその世界が、「BLの世界」なのだから大変です。少しでも気を抜いていたら、めくるめくBLのLOVEフラグがオンになってしまう世界で、巨乳好きを自称する主人公が、迫り来るイケメンたちを巧みにかわし続けます。
この交わし方というのが、日頃の分析と、BLマンガの読み漁りによる事前予習に裏打ちされたもので、それがそのまま「BLあるある」の解説になっているという構成。そう、本作は、読めば思わず「あるあるw」と唸ってしまうような”BLあるある”たちを、圧倒的にメタい視点から描くギャグ漫画なのです。
たとえばこの世界では……
・あちこちでやたらヤンキーや服越しにうっすら刺青が透けている人を見かけるが、治安はなぜか良い。
・中性的な名前のやつが多い。あだ名もなぜか女の子っぽくなる。
・結構な率で姉がいて、しかもなぜか大概逆らえない恐ろしい存在である。
といった調子。単行本には19本のエピソードが収録されているのですが、そこまでBL作品の読書量の多くない自分でさえも、「あ、なんか作品名とかキャラ名とか出てこないけど、見たことあるわ。こんなヤツいるわ。」の連続で、その類まれなる着眼点がとにかくすごい。
落とし方も上手で、作中ではこき下ろしているんですが、完全に「あちら側の人」が愛をもって(そして楽しく)描いていることが伝わってくるので、誰も不幸にならずにただただ純粋に楽しめるという、幸せな世界が広がっています。こういう悪意の無い作品って、いいですよね。
なお主人公はモブ・傍観者に徹しており、また万全の予防策を打っているので、ラブイベントに巻き込まれるということがほとんどありません。レギュラーキャラも弟のみなので、ストーリー的な発展はなし。ちゃんとしたBL読みたいんなら、ちゃんとしたBL読んだほうがいいです(当たり前)。
ちなみに面白いのが、モブだからといって、ただ目立たないように付き合い悪く孤立していれば良いというものでもないというところ。孤立すると、それはそれでキャラが立ってしまうので、巻き込まれるリスクが上がるという。だからモブポジながらも、主人公は結構行動的なんですよね。
私みたいなライト層ですらここまで刺さってるんだから、どっぷりと浸かった人たちがどういう反応をするのかすごく気になるところ。月曜日替わりレビューでBL担当してるアキミさんとか、どんな感じの反応になるんでしょうね。
逆に言えば、BLに触れたことがない人が読んでも、全く刺さらないでしょう。というか、そういう人はこの作品に手を出すことがないでしょうから、無用な心配ではあるのですが。というわけで、少しでもBLに触れたことがある人ならば、刺さること間違いなしですので、試し読みなりTwitterなりpixivなり、まずは1エピソード覗いてみてください。
©紺吉/祥伝社