2019.07.22
偶然の同居から始まる、日本が舞台の庶民派アラブBL!『うちのシーク様は待てができない』大月クルミ【おすすめ漫画】
『うちのシーク様は待てができない』
クーフィーヤをかぶった攻様がいたので、アラブものBL!! と飛びつきました。(※クーフィーヤ:アラビア半島社会で男性が頭にかぶる装身具、頭巾)
最近、アラブBLが減少傾向な気がしていたのでこの新刊は素直にうれしいですね。アラブBLといえば日本人受が攫われて目が覚めたら砂漠の国にいたとか、借金のカタに売り飛ばされてアラブの石油王にオークションで落札されるとかいう、ぶっ飛びバブリーな展開がテンプレなのですが、今回のアラブは少し毛色が違いました。
酔っぱらった日本人受・尊が道端で座っていた大型犬を連れて帰ったら、実は日本で荷物を紛失して途方に暮れていたアラブの富豪でしたという幕開けです。
シーク様というか、アラブ富豪の長男だったので正確にはシーク候補ですね。リアルわんこと間違えられたシーク様ことラフィですが、彼は富豪の跡取りなのに料理人になりたくて家出しちゃってるんです。
ガチで無一文だった自分に親切にしてくれた日本人に胸キュンしてるアラブ攻様……少し調子が狂います。
そして尊は、付き合ってたと思っていた彼氏に浮気されたショックで落ち込んでいたところ、保護していたラフィに慰められ、そのままベッドで致してしまいます。恋愛相談してるうちにただの恋愛になるあれですね!
こんな流れのお話なので、メインの舞台は中東のどこかの国ではなく日本です。作中でアラブマネーが登場したのは、ラフィの弟が日本の高級レストランで尊にちょっといい酒と肉をごちそうした程度。アラブにしては相当慎ましい散財具合です。というかラフィ、作中ではほとんど尊にお金をつぎ込んでない!
家出した長男をいったん連れ戻した父親は、なんと日本でレストランを開業することを条件付きで許可してしまい、ラフィは親公認で日本に滞在することになります。
日本レストランの開業準備をするアラブ。田舎の農家(偶然にも受の実家)に野菜の仕入れ交渉に出向くアラブ。自らキッチンに立って受に料理をふるまうアラブ。日本の不景気に連動してアラブBLまで庶民派・丁寧な暮らし化したというのでしょうか。もっと派手にアラブマネーをばら撒いてくれてもいいんですよ……。
地に足のついたアラブと申しましょうか。
地道に正攻法で実家から日本滞在許可をもぎ取り、1店舗からレストランを立ち上げて仕入れ先を開拓し、店舗数を増やして経営が軌道に乗ったところで実家に丸投げして、自身は尊と田舎でオーガニックレストランを開業することに。
思ったよりもだいぶ庶民派なアラブBLでした。ちょっと想像していたアラブではなかったんですけど、新鮮な読み心地がなかなか楽しかったです。ラフィの弟は正統派なアラブBL攻様になる素質があると思うので、ぜひスピンオフか続編として描いていただきたいと思います!
©大月クルミ/海王社