2019.08.09
【インタビュー】『ようかい居酒屋 のんべれケ。』nonco「『ここが好き!』と思える部分を必ず1ページに1つ入れる」
花の女子大生である“本金ひの”は、深夜営業の小さな居酒屋でバイトを始める。だが、そのお店の客は、“妖怪”だった──。
妖怪たちに好かれるひのと、彼女をとりまく人間&妖怪模様を描く居酒屋コメディ『ようかい居酒屋 のんべれケ。』の単行本第1巻が発売。
そこで今回は、夏コミ前で修羅場っている作者のnonco先生に突撃インタビューを敢行! 『のんべれケ。』の裏話をたっぷりと伺ってきました!
(取材・構成:かーずSP)
妖怪には何かしらの性癖を一つ持たせるように意識している
──『のんべれケ。』の連載にいたる経緯はどんな感じだったんでしょうか?
nonco:今の担当編集さんが、コミティアで出したマンガに興味を持っていただいたんです。それで打ち合わせをおこなって、紆余曲折を経て今に至ります。
──妖怪の集まる居酒屋でバイトする女の子、というシチュエーションが個性的な設定だと感じます。
nonco:最初は居酒屋で店員と客が絡む、という内容で考えていました。けどイマイチ、パンチが足りないねってことで、「じゃあ客を妖怪にしましょう」という流れですね。他の作家さんにこの話したら「安直…」と引かれましたが(笑)。
──いえいえ(笑)、伝統的な妖怪の一反木綿が抱き枕のプリントしているとか、妖怪の特性がギャグに繋がっていて笑えます。
nonco:ありがとうございます。妖怪にはその妖怪の特性や能力に合わせて何かしらの性癖を一つ持たせるよう意識はしています。
──性癖ですか(笑)。他にも、雪女の雑な扱われ方がおかしいです。瓶の中に入れられて振られたりして……。
nonco:あれは無銭飲食したせいで、店長に目をつけられてるだけですね(笑)。
──ライトなシモネタも楽しいです。相手の心が読めるサトリの回で、エッチな妄想が伝わっちゃうっていう。
nonco:編集さんに、「サトリにエロ面談させましょう」って言われて無理やり……。
文献を調べて、部屋に飾っていた「さるぼぼ」(※飛騨高山の郷土品)を見て、あ、このビジュアルにしよって決まった次第です。
きっと、この子は能力上「潔癖症」だろうな……とか想像して、ああいう風になりました。
──最初の河童の回で、河童→カッパー→銅→10円玉など細かいネタが仕込んであって、先生のツイートを見るまで気づきませんでした。
nonco:そういう読者を試すようなギャグは控えろと編集さんに注意されてます。
「ここ好き!」と思える部分を必ず1ページに1つ入れる
──『のんべれケ。』というタイトルの由来は、どうやって決まったんでしょうか?
nonco:この企画を提示した時点で「のんべれけ」というタイトルを出してました。「のんべえ」と「へべれけ」を足しただけで。
初めは「このタイトルだと造語で意味わかんないからダメ」って編集さんにボツにされていたんですけど、月日が経つうちに馴染んでしまったようで、『のんべれけ』でいいんじゃない? と。
で、他の作家さんにも「のんべれ怪(け)」はどう? と勧められて気に入ってたんですけど、パッと見て読みづらいので「怪」はカタカナの「ケ」になりました。
──へべれけと物の怪、両方の「ケ」がかかってるんですね。マンガを描くときに、大切にしている点はどこでしょうか?
nonco:絵でもネタでも「ここ好き!」と思える部分を必ず1ページに1つ入れることです。好きなところがないとそのページ描くの楽しくなくなってしまいますし。
──同人作品も含めてnonco先生のマンガは、テンポのいいギャグと顔芸が持ち味だなっていつも感じます。
nonco:ありがとうございます。顔芸ってよく言われるのですが、あまりそこを意識したことないんですよね……顔芸……なんですね……。
──だと思います(笑)。ひのちゃんが不幸な目に遭っても、イジメにならない悲惨さはなくて、笑えるサジ加減が絶妙です。
nonco:描いていて、とても辛いのですが、ほんと可哀想ですよね。ひのちゃん……幸せになっていただきたいです。
──自分のマンガで「これはやらない」と禁止している事はありますか?
nonco:パンチラは自分の中で禁止ですね。描くならモロに出します。
──パンツを出すこと自体はOKなんですか。あと、男性が出てこない点もこだわりがあるのかなと思ったんですが。
nonco:これ、とても倫理的なことなんですけど、ひのちゃんがいままでされてきたことって、相手が男性だったらセクハラになっちゃうじゃないですか……えっ? 同性でもセクハラなんですか?
──はい、おそらく(笑)。描きやすいキャラは誰でしょうか。
nonco:ひのと大家さんです。何か与えると勝手にリアクションを取ってくれるので描きやすいです。
──逆に描きにくいキャラはいますか?
nonco:強いて言えば線数が多いキャラ……ですかね。
──弁天は服装が大変そうです。
nonco:確かに。でも服装に縛りを付けてないので、そのうちTシャツになるんじゃないですかね(笑)。
──妖怪を題材にするにあたって、参考にしている資料などはありますか?
nonco:水木しげる先生の本です。それと他の資料と照らし合わせて想像する感じですかね。
読んだ人を一発で元気にしてくれるところが魅力
──メインキャラの本金ひの、のぞみは、作者からみてどんな子でしょうか?
nonco:ひのはとことん流されやすいけどポジティブな子。のぞみは頭悪いけど頼れる先輩です。
──店長さんは、いかがでしょうか?
nonco:店長はとにかく金に汚い。というコンセプト? ですね。
──『のんべれケ。』でご自身の経験が反映されているところはありますか?
nonco:3年間、「銀座ライオン」というビヤホールで、ビール注ぎのバイトしていました……という経験が生かされればいいなって思っています。
──担当編集さんへ質問です。編集者から見た『のんべれケ。』の魅力はどこだと思われますか?
nonco:どう思ってるか私、気になりますっ!
担当編集:一目で心惹かれる可愛い絵、魅力爆発なキャラクター、息つく暇なく繰り出されるギャグの嵐。語り出すと止まりませんが、読んだ人を一発で元気にしてくれるところが魅力だと思っています。nonco先生ワールドの真骨頂ですね。
──すごくわかります。今回の1巻について、コミックスの描き下ろし要素はありますか?
nonco:話の後日談的なものと、セーラー服好きなんで、それが描けるようなifストーリーがあります。
──書店特典はあるんでしょうか?
担当編集:はい。「とらのあな」の店舗・通販などで限定配布している応募券(またはメール)に記載されているシリアルコードで、描き下ろしサイン色紙、または複製原画プレゼントに応募することができます。
また、秋葉原店Aとなんば店Aでは「『ようかい居酒屋 のんべれケ。』【1杯目】初出勤」の複製原画を1話まるっと展示中! その他の店舗でも厳選した複製原画が見られます。
詳しくは『ようかい居酒屋 のんべれケ。』1巻発売記念フェア開催!をご覧ください。
『パルプフィクション』は、今でも最低月一は観てる
──ここからはnonco先生へのパーソナルな質問です。子供の頃からお好きだったマンガは何でしょうか?
nonco:たくさんありすぎてこれと決められないですが、ずっと手元にあるのは、あさりよしとお先生の『まんがサイエンス』です。子供の頃からすごく好きで、私の絵や性癖の根源に根付いていると今改めて感じます。
──マンガ以外で、小説、映画やテレビ番組などオールタイム・ベストを教えてください。
nonco:クエンティン・タランティーノ監督の映画『パルプフィクション』です。セリフ、ネタ、構成、キャラ、すべてがとても魅力的なんです。最低でも月一は観てます。
──ご自身の作風で、影響を受けた作品はありますでしょうか?
nonco:いろんな作品に影響されているので、これというのはとても難しいです。けど、強いて言えばアニメの『フリクリ』ですかね。作画で色々参考にさせていただきました。
──いつ頃からマンガ家を目指したのでしょうか?
nonco:子供の頃からなれたらいいな…と思ってましたが、本格的に行動したのは2年前ぐらいです。
──最近おすすめのマンガを教えてください。
nonco:ひとつだけ、というならば沙村広明先生の『波よ聞いてくれ』です。大好きです。
──マンガ以外のご趣味について、教えてください。
nonco:山登りとキャッチボールが好きです。最近どっちもやれてないですけど、あとお酒飲むのが好きです。
──スランプ脱出法はありますか?
nonco:1時間に一度はスランプを感じているので、脱出という感じではないですが、とにかく描くこととお風呂に入ることですね。私の住んでいる地域に良い銭湯があるんですよ。それでもダメならお酒飲んで寝ます。
──それでは最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
nonco:マンガを通じて、自分の「好き」を見てほしいです。こんな私ですが少しでもどんな形でも心に残ることができたら嬉しいです。これからも頑張っていきたいとおもいますので、引き続きご指導ご鞭撻、よろしくお願い致します。
──本日はありがとうございました!
©nonco/講談社