2019.08.24
重度のショタコンお姫様と、キュートであどけない容姿の召使いのラブコメディ!『とあるお姫さまのはなし』亜乃アメ助【おすすめ漫画】
『とあるお姫さまのはなし』
本日ご紹介するWebマンガはこちら。Twitterでの発表後2017年11月から今年3月にかけて「ジーンピクシブ」で連載、単行本全2巻をもってフィナーレを迎えた『とあるお姫さまのはなし』だ。
とある小さな国のお姫さま・メアリーは王子様系男子アレルギー。ナルシストでキザな男がどうにも性に合わず、社交の場で外国の王子たちと顔を合わせる機会があっても、ロマンスの予感でときめく事などみじんもないという、風変わりな気質の持ち主である。
では、そんな彼女がこよなく好むものは何か。それは……ショタ! 幼く純真な男の子が三度の飯より大好物なのだ!
そんな姫のもとに天使のごとくキュートであどけない容姿の召使い・セシルがいるものだから、さあ大変。メアリー姫は彼を自分の専属にして毎日デレデレになりながら贔屓の引き倒しで寵愛しまくっていく。
かわいいショタには半袖にショートパンツ! と週一で新しい服を買い与えるのは序の口、ちょっとした笑顔も見逃さずカメラでパシャパシャ撮って部屋の一角をびっしり顔写真で埋めるわ、それでは飽き足らず盗撮までして勝手に写真集を作るわ、あげくのはてにはパンツを盗んで……っておいおい。
セシルきゅんの一挙手一投足に毎回テンション高まるメアリー姫が、「最高」「尊い」「私は今日死ぬかもしれない」と心の声を上げながら鼻や口から血を吹くさまは、もはや趣味を通り越して何かヤバい本能に突き動かされるショタコンモンスターである。
ところが、そこにひとつの問題が。
姫さまがセシルにショタとしての可愛さを見出せば見出すほど、彼が言い出しにくくなる一つの事実があった。なんとこのセシル、幼くは見えても年齢は姫より上の25歳。たぐいまれな童顔と絶妙な身長の低さでどうみてもショタにしか思えないが、成人男性なのだ! 姫はそのことにまったく気づいていない。
セシルはいつか本当のことを姫さまに伝えられるのか。その時“年上の男セシル”に対してショタコン姫はどう反応するのか。セシルを可愛がる姫と姫に忠誠を尽くすセシル、それぞれの心のより奥に潜む気持ちとは。
さあ、ショタコン溺愛プリンセス × “年上ショタ”召使い男子の、色んな意味でドキドキな日常の向かう先はどっちだ!?
……というのが本作の大筋。
全体の流れでいうと、前半はとにかくショタを愛でる姫様の感覚に乗じた様々なシチュエーションが前面に出て、読者はセシルの実年齢を知りながら、メアリー視点でショタに見えるセシルのほわほわした可愛さにハマることになる。大人たちがセシルと話をする時みんな中腰にかがむという、身長ギャップでセシルの小柄が引き立つ図を目撃して大興奮するなどメアリーの上級者ぶりがたいへん面白い。
さらにはオジさま執事に萌え狂う隣国のお姫様なんてキャラも出てきて、しばらくはラブコメというより“フェチコメ”に重心がかかっている。
それが後半に入るとコメディの軸がくるりと人間ドラマの軸に回り込み、セシルが成人男性であるという隠し事の上にそもそもふたりは主従であるという身分の問題も加えて人間関係を波立たせ、ラブのあるコメディへと深まっていく流れが美しい。
そこまでどっさりと可愛がり・可愛がられる関係を描きこんでおいてから、「好き」の気持ちひとつあらわすのが試練となる展開がなんとも上手い。
ショタを「愛でる」というのは外形的な行為かもしれないが、それでもその中に「愛」の一字が入っているのだよな……なんて言葉遊びをしてみたくなるのだった。
©亜乃アメ助/KADOKAWA