2019.09.30
名作BL『ポルノグラファー』のスピンオフ!ポルノ作家・木島の過去を描いた、本編にも奥行きを与えるタイトル!『インディゴの気分』丸木戸マキ【おすすめ漫画】
『インディゴの気分』
前回レビュー記事を公開した、『ポルノグラファー』のスピンオフで過去編です。
ポルノ作家・木島の若かりし頃、作家としてデビューしたものの、どんどん売れなくなって食いつめる寸前までいっていた時のお話になります。本作は過去編ですので、ここでのカップリングが成就することはありません。なので、本編『ポルノグラファー』に続くお話と思って読みましょう。
カップリングは、「担当編集(大学時代の同級生) × 若かりし官能小説家の卵」になります。
『ポルノグラファー』でも出てきた担当編集者の城戸が攻ですね。もう一人のキーマンとして登場した大御所の官能小説家・蒲生田も重要な存在です。癌で余命宣告されており、最後に執筆している作品の原稿獲得を目指して、各出版社が熾烈な争いを繰り広げていたのです。
蒲生田の原稿を獲得できたら、結婚を考えている女性の親が納得するビジネス書を作っている版元を紹介すると言われていた城戸は、ついうっかり本人の了承を得ずに木島を蒲生田に弟子として差し出してしまいます。
まだ官能小説をつかみ切れていなかった木島は、城戸に泣き落とされて蒲生田の弟子として彼の家に出向きますが、そこで女ではないことを責められ、弟子にしてほしかったら城戸のモノをしゃぶっていかせろと無茶ぶりをされます。そして……やっちゃいます。
そこから城戸と木島の関係が始まり、木島は蒲生田の弟子として家を出入りし始めます。そのおかげもあって、城戸の版元が、遺稿を手に入れることになりました。
城戸と木島は、明るい空の下で祝福されるような恋愛関係ではありませんでしたが、その時はお互いが必要だったし、相手を求める気持ちは本物でした。死期が近い蒲生田の存在も相まって、作品全体に、終始ほの暗く淫靡な雰囲気が漂っています。
蒲生田の原稿の最後の仕上げは木島が行い、遺稿は無事に完成して世に出ました。そんな中、蒲生田の原稿を取る裏に結婚相手の親がいたことや、転職先を紹介されていたこと等がばれて、城戸は木島に激怒されますが、逆切れして大喧嘩です。
蒲生田の死を切っ掛けに遺影の前で仲直りエッチをして仲直りをしますが、そのままちゃんとお付き合いということにはなりません。
城戸は別の女性と結婚し、木島は官能小説家としてピークを迎えた後、次第にスランプに陥ってしまい、エピソードは『ポルノグラファー』に続きます。この過去があっての、本編での木島なのか……というある種の納得が得られる作品だと思います。
ハッピーエンドではないものの、本編にも奥行きを与える大事な1冊です。
©丸木戸マキ/祥伝社