2020.04.01
親友(32)が異世界で金髪美少女になった件。『異世界美少女受肉おじさんと』津留崎優、池澤真【おすすめ漫画】
『異世界美少女受肉おじさんと』
親友(32)が異世界で金髪美少女になった件、通称「ファ美肉」
通称「ファ美肉おじさん(ファンタジー美少女受肉おじさん)」。
異世界ものと性転換ものをミックスした時点で、そりゃ面白いに決まっている。双方のジャンルのいいところをぎゅっと濃縮した作品だ。
容姿端麗文武両道、非の打ち所のない長身男子・神宮寺司(じんぐうじ つかさ)。非常に女子にモテるが、ゆえに極度の女性不信。
彼の幼馴染で身長体重なにもかもが平均値の橘日向(たちばな ひなた)。一緒にいると好きになった女の子がすべて神宮寺に流れていってしまうことで悩んでいた。
32歳になった幼馴染の2人、とある女神の気まぐれで異世界に送られてしまう。一番の問題は橘が絶世の金髪美少女になってしまったことだ。
橘を見ていると得体のしれない感情が湧き上がって堪えられなくなる神宮寺。男前な神宮寺の姿が無性に格好良く感じてしまい戸惑う橘。異世界生活どころじゃない、幼馴染おじさん2人は自らのときめきに抗うため必死に心を落ち着けようとしはじめる。
「仲のいい同性の友人」が性転換することで「あらゆる気持ちを分かってくれる究極理想的存在」になるのは、性転換ものではとても重要なポイント。
神宮寺自体の性癖はヘテロ。ただ女性といると心が安らがなかった。だから親友の橘といる時の安心感を頼りに生きてきたわけだが、その橘が女の子になったとなると「心の安らぎ」「異性へのときめき」両方が充足される。
2人は女神にチート能力を与えられた。神宮寺はワンパンでモンスターを倒せるほどの近接戦闘能力を身に着けた。橘は魅了の魔法に近いレベルの絶世の美貌を手に入れたことで、交渉術最強レベル。
おかげで異世界で起きる襲撃などの事件はあっさり解決。異世界無双ものというよりは、性転換に悩む2人の日常のスパイスとしての異世界、という味付けだ。よくわからない異世界で魔王を倒して世界を救う云々よりも、横にいる幼馴染の親友への心のゆらぎをなんとかする方が重要な問題、という見せ方が楽しい。
橘の「絶世の美貌」像がかなり趣味に偏っているのが清々しい。洋風金髪長髪ロリータで、ギザギザな歯、衣装はお嬢様風。
作者の「かわいい!」というイメージが読んでいて真っ向から伝わってきて、大変気持ちがいい。オールバックスーツ男子と幼い少女という組み合わせのビジュアルも反則級。そして二人共30代のいいおじさんで、行動原理は地に足がついている。
何から何まで極めて安心して楽しめる、疲れた時向けな異世界作品だ。
©池澤真, 津留崎優/小学館