2020.04.10
はちゃめちゃに純粋&元気ヒロインが繰り広げる、現代に生きる忍者の恋!『忍恋』鈴木ジュリエッタ【おすすめ漫画】
『忍恋』
鈴木ジュリエッタ先生の『忍恋』第4巻が発売されました。
現代に生きる忍者の恋
物語の舞台は、現代に残る忍の里。周囲に期待され育った杏子(あんこ)は、成長と共に次第に男子に実力で抜かれてしまい、これ以上「女の子」になりたくないと思い悩むのでした。
そんな中、名家である華山院家の嫡子・楓が現れ、専属の側忍を選考すると言い……というストーリー。
ここまでのあらすじ紹介だとちょっとよくわからないと思うので補足すると、男子との差に思い悩む杏子は、楓との邂逅をきっかけに自分のことを認められるようになります。結局側忍として登用されることはありませんでしたが、「必ず会いに来る」と約束をし、しばしのお別れをするのでした。
時は流れ、杏子も一人前の忍目前にまでなるのですが、未だ会いに来ることのない楓への想いは積り溢れ、ついに里を飛び出し東京に会いに行くという暴挙(ご法度)に打って出ます。
紆余曲折あり楓と再会することが出来た杏子は、1年限りという契約で、楓の側忍になることになるのですが、この楓がかなり変わった性格の持ち主であり、また周囲から命を狙われまくっているという厄介な人物で、杏子も様々な事件に巻き込まれていくというラブコメディでございます。
忍者あり、バイオレンスありな設定ながら、あくまでラブコメディですので、お忘れなきよう。
死ぬほど純粋&元気なヒロイン
物語の軸となるのは、杏子の恋であるのですが、杏子自身は純粋な田舎娘を絵に描いたような世間知らずで、自分自身の恋心も自覚できていないようなお子様っぷり。極めて行動的で、ひとたび火がつくと全速力で突っ走り暴走するという、「花とゆめ」では王道とも言えるヒロインとなっています。
彼女自身が恋に気づくことができるのかという話と共に、側忍の決まりとして「主人に恋をしてはいけない」という条項があることから、2つの壁にぶつかることになります。そこが見どころではあるのですが、こうド直球に恋愛するわけじゃないんですよね。
ハイスペックイケメンながら圧倒的に変人な相手役
そんなイノセントな杏子に対して、楓はかなり捻じ曲がった感じのキャラクター。表社会も裏社会も牛耳る絶対的な存在でありながら、そのやり口などから敵も多く、常にその命を狙われています。また偏食家の引きこもりで、かなり自由かつ身勝手な言動が目立つのもその印象に拍車をかけています。
杏子を偏愛しているにも関わらず、どこかつれない態度を取ったりと、なかなかつかみどころのないキャラクターで、杏子自身も彼に四方八方に振り回されることになります。
恋というか濃い
楓だけでなく、彼らを取り巻くキャラクターたちもひと癖もふた癖もあるような個性派揃いで、キャラクター祭りといった様相。まじでひとりも普通のキャラいないです。
確かに『カラクリオデット』でも『神様はじめました』でも、個性派キャラクター達で回す印象がありましたが、ここ2作ぐらいでそれに拍車がかかったような印象。物語設定も相まって、オフビート感マックスで作品を楽しむことができます。
個人的なお気に入りキャラは、女という武器を最大限に使ってのし上がっていく元忍・紗々女。とにかく野心の塊という感じで、無垢すぎる杏子を目の仇にしている姿など、汚い感情が前面に出ているところが本当に最高に「ヒール」って感じがして見ていてメチャクチャ気持ちいいんですよね。
キャラクターはどれも個性的ですし、物語背景もなかなか複雑に詰め込まれているし、次から次へと大小あれど事件は起きるしと、まあとにかく全体的な味が濃い。結構好き嫌い分かれそうではあるのですが、さすが実績のある漫画家さんですから、巻の切れ目のブリッジがすごい。次巻がめちゃめちゃ気になる感じで終わらせてくるんですよ。
そのオリジナリティに圧倒されつつも、最後「あ、読みたい」と思わせるこの力たるや。
ここまで好き放題出来るのも、実績のある漫画家さんだからこそでしょうし、そうした作品を楽しめるのもまた一興ということで、ここはひとつ、めくるめく鈴木ジュリエッタ先生の世界にどっぷりと浸かってみてはいかがでしょう?
©鈴木ジュリエッタ/白泉社