2020.05.08
30半ばのOLと食欲性欲ともに旺盛なイケメンの「料理がつなぐ恋」!『隣の男はよく食べる』美波はるこ【おすすめ漫画】
『隣の男はよく食べる』
美波はるこ先生の『隣の男はよく食べる』の第1巻が発売されました。
美波はるこ先生ですが、はるこ名義で『酒と恋には酔って然るべき』という、日本酒をテーマに描いた恋物語でヒットを飛ばしており、今回も「料理がつなぐ恋」ということで、なんとなく同系統であることがうかがえます。
物語の主人公は、男日照りが10年ほど続いている30も半ばのOL・大河内麻紀。気が付けば、女として色々なところが疎かに……。結婚はしたい。でももういい歳だし、流されるような恋はしたくない……。
そんな中、ひょんなことから隣の部屋に住む青年・本宮とお近づきになるのですが……というストーリー。
『酒と恋には酔って然るべき』では、初めて部屋を訪れた男性相手に、おしゃれ日本酒ではなくワンカップを振る舞うというまさかの展開に度肝抜かれたわけですが、今回もなかなかスピーディに関係が深まっていきます。
仲良くなるきっかけは、麻紀が部屋の鍵を紛失して家に入れなくなっていたところを、彼に助けてもらったことから。お礼にと手料理を振る舞ったところ、妙に馴れ馴れしい彼は、その後もたびたびご飯をねだり、頻繁に麻紀の部屋に来るようになります。
さらには料理だけでなく、流れから身体の関係まで持つようになり、なんともはっきりしない関係が出来上がります。
麻紀は麻紀で、この関係におさまりの悪さを感じつつも、年下のイケメンに「おいしい」と料理を食べてもらえるのは悪い気はしませんし、女性として求められることで、身体も心も満たされるので、ついついこの状況に甘えてしまうという悪循環。
決定的な意思確認ができないまま、その関係が継続してしまいます。
一方のお相手・本宮ですが、ご飯にセックスに自身の欲求はグイグイとぶつけてくるのに、いざ愛情表現となると途端に出てこなくなるので、気持ちが読めない。もちろん「好き」って言葉は言ってくれるんですけれど、そのニュアンスが「この料理好き」と同じに聞こえる感じというか。なんならシーンによってはご飯優先の感すらあるという。
食欲性欲ともに旺盛で、生物としての欲求に正直というか、その開けっぴろげな態度にヒロインは不安になるのです。ちなみに「よく食べる」ってのは、性欲の意味も含まれてるんですね。
この肝心なところではっきりしない感じが、個人的には読んでても一ミリも魅力的に映らないんですが(暴言)、その分ヒロインに同情的に物語を楽しむことができます。なんとも扱いづらい相手を好きになってしまった面倒くささやもどかしさみたいなものが、この作品の面白さの源泉となっているのでしょう。
物語では、彼のほかに、同僚でバツイチ子持ちの人の好さそうな先輩が相手候補として参入してくるのですが、本宮へのハマりっぷりを見ると、今のところそんなに脅威ではないかなぁ。
ただ誠実そうな男性ってのは、距離が近づいてからが強いですから、2巻以降の巻き返しやいかに。
同時に1巻ラストでは本宮くんによる「俺の本気見せます」宣言が飛び出し、彼の新たな魅力が引き出される展開にも期待ですが、いやだったらもっと早くから見せろよと思ってしまうのは、モテない男のひがみですかそうですか。
©美波はるこ/集英社