2021.04.02
高校二年生の最悪な17歳の誕生日を経て、幼なじみの4人と繰り広げられる、キラキラの青春ラブストーリー!『どうせ、恋してしまうんだ。』満井春香【おすすめ漫画】
『どうせ、恋してしまうんだ。』
満井春香先生の新連載『どうせ、恋してしまうんだ。』の第1巻が発売されました。
満井先生といえば、「デザート」で『放課後、恋した。』という圧倒的に青春キラッキラのラブストーリーを連載しておりましたが、今回も申し分なくキラッキラ。イケメン4人と幼馴染の女の子っていう時点でもう、アガる設定じゃないですか。
高校二年生の水帆は、最悪な17歳の誕生日を迎えていた。あこがれの先輩に近づくチャンスはなくなるし、親には誕生日をすっかり忘れられてるし……。”キラキラした青春”なんてない。そう思っていたのに、幼なじみの輝月が、突然”彼氏候補宣言”してきて……。
イケメンに囲まれる役得なヒロイン
表紙には1人しか描かれていないのですが、彼はあらまし紹介にも登場した彼氏候補宣言の輝月くん。水泳部に所属しており、その端正なルックスから女子からも大人気のイケメン君です。その他の3人も軒並みイケメン。読者モデルをしているような子もおり、そんな彼らといつも一緒に行動をしている水帆は、周囲から羨ましがられているも、当の本人はそれに無自覚という美味しいシチュエーションでございます。
幼い頃から一緒にいるので、水帆は彼ら4人には目もくれないわけですけれど、メンズたちは程度の差こそあれ、各々水帆に対して特別な感情は抱いている模様。わかりやすく恋愛感情として発露させているのが輝月なんですけれども、鈍感な水帆に対して、真っ直ぐガンガン攻め込みます。
『あたし、キスした。』でバンバンキスさせてた満井先生ですから、キスも頻発ですよ。水帆はそんな輝月に対して、取り乱しつつOKともNGとも言わないわけですけれど、ほいほいキスされちゃう水帆のガードの甘さも一因というか、嫌なら頑として拒否できるわけで、防衛線の崩落は早そうな感。
輝月だけじゃない
一応水帆にも想い人はおりまして、輝月の部活の先輩なんですけれども、もうメイン4人に比べてわかりやすくキラキラ感が無いんですよ。モブ感というか。1巻では彼もメインストーリーに絡んでくるんですが、(キャラクターとしての)命はそう長くなさそうだな、と。
このまま輝月にガンガン攻め込まれたらあっという間に物語が終わってしまいそうなのですが、おそらくそこに他の3人も加わってくることでしょう。もう設定だけで幾らでも展開できるでしょうし、変な女子キャラが乱入してきそうな余地も現時点ではあまりなさそうで、もう何でもできるじゃんという。このままキラキラ感を増しつつ物語は進行していきそうな安心感がすでにあります。
2030年のシーンの意味
単純にキラキラの青春ラブストーリーとしての出来も良いのですが、その他で強調しておきたいポイントが2点ほど。
まず1点目が、物語の導入が2030年で、仕事がうまく行っていない中、10年前の高校時代を懐かしむという形で始まるところ。たった数ページなんですが、明らかにこれから描かれるキラキラが失われるという宣言でもあるわけで、展開どうなるんだろうな、と。
しかもこれ、連載誌「デザート」じゃなく「なかよし」なんですよね。この描写の狙っているところは分からないのですが、キラッキラの青春時代を経て、くたびれた大人になってから再び青春が動き出す……みたいな展開が待っているのだとしたら激アツなんですが。でも社会人の恋愛、「なかよし」でやりますかねぇ。そんな背景はさておき、個人的にはかなり好みな匂わせでございます。
アフターコロナの世界
2点目が、時代設定が2020年ということもあり、普通に新型コロナがある世界が描かれます。水泳大会が中止になり、部活での目標を失ったり、修学旅行が中止になったりと、現実の世界で起こった出来事が普通に描かれているという。一方で、登場人物たちは普段マスクをしておらず、普通に素顔。まあマスクしてたら輝月もキス攻めできないしね。
この辺は、リアリティを持たせたいという想いと、少女マンガとしての体裁を保たせたいという想いの狭間での、苦肉の策というか、ギリギリの落とし所なのでしょう。
たとえばこのような状況がしばらく続いたとしたら、特に「なかよし」など低年齢向けの雑誌の場合、アフターコロナの世界しかしらないような読者がいち早く登場するわけで、コロナの無い世界が描かれると、それはもはやファンタジーと同義になりかねない。
他の雑誌とは狙い所というか、意味合いがぜんぜん違う可能性もあるわけで、色々な意味で注目をしたい一作でございます。
©満井春香/講談社