2021.04.09
ある日突然男子になった女子高生が、全寮制の男子校に通うことになるTSFストーリー!『三日月まおは♂♀を選べない』西野きいな【おすすめ漫画】
『三日月まおは♂♀を選べない』
西野きいな先生による『三日月まおは♂♀を選べない』の第1巻が発売されました。さっそくあらすじをご紹介。
付き合って2週間の初カレにフラれた。ヤツがヤリモク嘘つきクズ野郎だと知った。もうやだ。嫌い。男なんて大嫌い……って呪いながら寝たら、翌朝オトコになっていた。パパ曰く(元はパパもママだったみたい。)、うちの家系は男か女か性別を選べる体質らしい。もう男に騙されるのはコリゴリだから、オトコとして生きることに決めた。全寮制の男子校に入学した。感じ悪い男とルームメイトになった。ひょんなことからキスされた。その瞬間、オンナに戻った。色々頭が追いつかないパニック。三日月まお、性別が定まらない16歳。恋とかときめきとかもういらないんですけど!!!
鉄板のTSFモノ
主人公視点の非常に丁寧なあらすじ説明でございますが、いわゆるTSF(Trans Sexual Fiction)です。レーベル的には小学館の「ベツコミ」になるんですが、ベツコミ系列にしては珍しいファンタジー要素を取り入れた作品となっています。これが結構ハマっていて面白いのですよ。
主人公の三日月まおは純情な女子高生。Gカップという巨乳のせいか、寄ってきた男はヤリ目クソ野郎で、男に対して幻滅・絶望。冒頭の通り、それがきっかけとなり元々持っていた「性転換の体質」が発現。物語が始まって数ページで男になるのですが、戸惑うのも束の間、男として生きてみることを決意し、早々に男子として転校するというなかなかのスピード展開を見せます。
男の子になりたての元女子を、いきなり男と同室となる全寮制の男子校にぶち込むという気遣いの無さだとか、手続き的にどうやって通したんだろうという細かい疑問は浮かぶものの、本作においてはそんな細かいこと気にしちゃいけない。というか、気にならない。突然性転換するという事象の前では、些細なことなんです。
その後、同室となった男子と事故チューし、女に戻ることで、キスが性転換のスイッチとなることが判明。以後、意図的だったり不意だったり、ちょこちょことキスをしては性転換を繰り返します。この辺のキスに対するガードのゆるさやお色気ハプニング志向は、小学館の少女マンガ的であり、TSFという設定と良く噛み合っているなぁと感心。
相手候補は男子も女子も
相手役の筆頭となるのは、寮で同室となるイケメン・流星。口が悪く誤解されがちなのですが、意外と友達想いで真っ直ぐな性格の持ち主であり、男同士ではあるものの、互いにドキドキして意識しちゃうっていう、BでLな感じに。イケメンな男子たちが寮でキャッキャする風景も尊いのですが、そこにBL的な要素が落とし込まれるとまた違った味わいがあり、さらにおいしい。
一方で、元々女子だったということもあり、困った女の子を極めて自然にスマートに助けちゃうことで、女子からの人気も獲得。クラスメイトのギャルっぽい女の子とイイ感じになるなど、相手役候補が男子女子両方いるというところがまたおいしいんですよね。
今のところ明確に流星に対してはドキドキしており、女子に対してはドキドキしないという明確な区切りがあることから、まおが女子になびくことは多分なさそう。しかしながらその優しさゆえに、頼み込まれて付き合っちゃうみたいな展開は普通にありそうで、いろいろな可能性が想像できてニヤニヤしてしまいます。
その他、物語が進むと共に、性転換が寮の友達にバレたりするわけですが、知られているがゆえに頼ってしまう・頼られてしまう=強固な関係を築きやすい(恋愛的な発展も期待できる)わけで、こうして物語に波乱を巻き起こしそうな要素が色々と着実にバラまかれているのもまた、期待感を高める一因に。
要するに、これから物語が転がる要素がそれはもうたくさんあるということです。
色々と語っていますが、普通にTSFものとして完成度高いんですよね。ベースはコメディで、非常にテンポよく小気味よい展開で進行する読みやすい作品に仕上がっています。様々なハプニングからのドキドキと、これからの展開へのワクワクの両方が詰まった良作。ベツコミらしからぬ変わり種ですが、これは個人的に強くプッシュしたい一作です。是非ともチェックを!
©西野きいな/小学館