2021.04.16
「告白されると、相手が死ぬ」という過酷な条件下で繰り広げられる、両想い同士のラブコメディ!『ごめん、名波くんとは付き合えない』我楽谷【おすすめ漫画】
『ごめん、名波くんとは付き合えない』
我楽谷先生による『ごめん、名波くんとは付き合えない』の第1巻が発売されました。さっそくあらすじをご紹介しましょう。
高校2年生の春休み、ずっと好きだった名波に告白されたむつき。しかしその直後、名波は事故に遭ってしまう。「私が代わりに死んでもいいから、名波くんを連れていかないで……!」と強く願った瞬間、目が覚めると2年生の初日に戻っていて……!そして謎の死神に告げられた、彼を救う条件は「名波に告白されずに高校2年生をやり直すこと」⁉ 両想いの相手からの告白を回避し続ける不本意すぎるラブファイトがはじまる!
告白されたら死ぬ(相手が)
というわけで、「告白されると、相手が死ぬ」という過酷な条件下で繰り広げられるラブストーリー。
主人公のむつきと、その想い人・名波くんですが、高校に入って早々に仲良くなり、何で付き合っていないのか不思議なぐらいに両想いな関係を築いてきました。そしてついに告白……というタイミングで訪れた、名波くんの事故死。彼の魂を抜きに来た死神曰く、彼は条件付きで死ぬ運命にあったとのこと。
その条件というのが、「高2の時」「むつきに」「告白した時」というもの。
自身の寿命と引き換えに、高校2年生をやり直すことにしたむつきは、名波くんからの告白を必死にかわす過酷な日々を送ることになるのでした。
互いに既に両想いで、あとはきっかけさえあればいつでも告白が飛び出るようなステータス。閉鎖空間で2人きりになるのすら告白チャンスなわけで、危ないわけですよ。
一方、告白されることを恐れて名波くんを遠ざけると、せっかくここまで高めてきた”好き”のゲージを下げてしまうことになる。下手したら、両想いでなくなってしまうかもしれないわけで、あまり無下にもできないというジレンマ。
まだ意志の弱い高校生ですから、そりゃあ好きな相手と一緒に過ごしてかけがえのない時間を過ごしたいわけで、頭では「ダメ」と思いつつも、ハートには逆らえず近くにいてしまったりする矛盾とドキドキが一つの見どころとなっています。
冷やかしの死神
先述した通り、提示された条件は明確であり、同時に解決方法も分かりやすい。それは、一番最初の「高2の時」を崩し、高3になるまで持っていくというもので、ゴールは明確に決まっています。もちろん高3の時に告白されればベストですが、そのためには告白されるだけの状態を保ち続けなければいけないという。
まあ別に、これといったライバルもいなさそうですし、全然問題ないと思うんですけどね。
一つ場を乱す要素があるとすれば、死神ですかね。彼が暇つぶし&冷やかしで、人間の姿になって学校に紛れ込み、あわよくば名波くんがむつきに告白するように仕向けるというなかなか嫌らしい役回りを務めるのです。
ただ、こうしてまでむつきにチャンスを与える動機というのがよくわからず(引き換えに寿命をもらっているとはいえ)、もしかしたらさらに隠された設定などがあるのかもしれません。
噛み合わせ
分かりやすい設定で、色々な条件もテレビゲームライクで、非常に読みやすい作品となっています。
一方で少し残念なのが、むつきの名波くんに対する想いの強さを裏付けるエピソードが希薄であること。この件をきっかけに、むつきは結構な年数の寿命を死神に差し出すことになるのですが、寿命を縮めてまでも彼に生きてほしいと願うだけのバックグラウンドがあまり描かれておらず、若干感情移入しにくくなっているんですよね。
また、設定上仕方ないのですが、主人公の目的が「告白を遠ざけること」であるため、ロマンチックな雰囲気になるとどうしてもその腰を折る必要がある。ゆえにどうしてもドキドキするラブロマンス的展開ではなく、ドタバタコメディ的展開になりがちなんですよね。
元々両想い同士で、好きのゲージが限界突破しているカップリングだけに、沸点を越えてもなお沸騰しないニヤニヤな展開とかあってもいいと思うのですが、構造上そうならないのがとても歯がゆいというか、噛み合わせの悪さを感じるところ。このあたりは少しのテコ入れでいかようにも軌道修正できそうな感じもするので、今後の展開に期待したいところです。
©我楽谷/講談社