2018.02.26
【日替わりレビュー:月曜日】『午前0時のジオラマ』WAX
午前0時のジオラマ
2組のカップルの恋愛模様が楽しめる本作。それぞれのカップルのお話がリンクしているので連作中編的な雰囲気が楽しめます。
メインカップルは、バイの不倫相手にされて恋愛不信気味になっている、普通に憧れるシンヤ(受)と、家庭事情が複雑すぎて無戸籍のまま大人になり、オフィス街のビルの屋上でテント暮らしをしていた美青年・マヒル。毎日ビルの屋上で遠目に挨拶を交わすだけの相手だったはずが、ある日、台風でテントを吹っ飛ばされたマヒルを、シンヤが家に招き入れるところから、彼らの関係は変化していきます。
元々が正反対の性格のふたりですが、波長は合うようです。ただ、マヒルはゲイではなく、シンヤはそこに怯えてなかなか素直に自分の恋愛感情と向き合うことができません。そこにシンヤの元カレが絡んでくるので読んでいる方はハラハラさせられっぱなしです。とりあえず、元カレが作った服を説明もなくいま好きな男に着せるのはちょっとデリカシーにかけるのではないかと思う次第です。
まあ、その服を作った本人から聞かされて、外だというのにその男の眼の前で全部脱いで返そうとするマヒルもなかなかですが……気持ちはわかる。
しかし、こうやって外からの揺さぶりがあったからこそシンヤはマヒルへの気持ちと向き合わざるを得なくなったのだし、よくある雨降って地固まる方式で、うまく転がって両想いになってくれたので結果オーライというところでしょう。劇的にドラマチックな展開があるわけではないのですが、普通に暮らして行くなかで変化していくシンヤの感情に萌えますし、夜のオフィス街で手を繋ぐいい年した大人が大変可愛かったので大満足です。
もうひとつのカップルは、幼馴染みから始まる恋です。大人しい元いじめられっ子(攻)と、芸能界に片足を突っ込んでいる派手な遊び人(受)が、両想いのハズなのにくっつくまであれこれと遠回りしてくれます。
いやいや幼馴染ならもっとコミュニケーションとろ!? 以心伝心とか無理だっていい加減この年数付き合いが続いていたらわかるじゃない!!!?
くっついてくれて良かったけど、身近にいたら蹴っ飛ばしてしまいそうなカップルでしたね……。
ラストでこの2組のカップルが屋上で一緒にご飯を食べて大団円な終わり方をしてくれたのでスッキリ読み終えることができました。
ごちそうさまです。
@WAX/心交社